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私の正体は? ―鑑定刀 第五回【解答】
- 銀座長州屋WEB編集部
- 2024年2月19日
- 読了時間: 3分
更新日:2024年5月17日
【解答】
一振目:[正解]脇差 銘 大和守安定
金象嵌銘 寛文元年閏八月八日大袈裟片手打截断 山野加右衛門六十四歳切之永久(花押)

問題1は大和守安定の脇差でした。
寛文新刀ですが、極端に反りは浅くなく、先幅も広く鋒が詰まっており、極端な寛文新刀体配ではないですが、元先の幅差があまりつかない、実に力強い、言い方を変えればやや武骨な姿をしています。
しかも金象嵌截断銘がある・・・そうなると、これは、大坂新刀ではないようなあ・・・。
もちろん、大坂新刀にも肥前刀にも截断銘はありますが、截断銘の本場といえば、やはり江戸でしょう。
地鉄は精美な小板目肌です。潤いもあり、冴えています。かなり上手な人ですね。
刃文をみると、浅い湾れに互の目、そして互の目は角がかった形をしています。
帽子に弛みごころがあるのも見所です。
律動的な起伏のある互の目乱刃、そういえば、虎徹の瓢箪刃もこんな感じだったかなあ・・・・。
でも、虎徹かな?でも虎徹とはちょっと違うなあ・・・。虎徹に近い時代の江戸の刀鍛冶の作かも知れないなあ・・・。
茎の鑢目をみましょう。急な筋違鑢ですが、ちょっと変わっています。
傾斜がだんだん急になる筋違鑢。安定の鑢はこういう感じです。
そして裏には金象嵌試し銘があります。寛文元年頃、山野加右衛門永久が試している作は結構たくさんありまして、出来がよく、重要に指定されたりしています。

金象嵌銘

脇差 銘 大和守安定
金象嵌銘 寛文元年閏八月八日大袈裟片手打截断 山野加右衛門六十四歳切之永久(花押)
本作には、杉岡一拳在銘作の鐔に、四君子の揃金具で装われた、極上の突兵拵が附されております。
二振目:[正解]脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣

問題2は武蔵大掾忠廣の脇差でした。
写しを命じた主君・・・それは鍋島勝茂侯です。
他に長義を写したり、志津に似せて作れ、疵が出ないようにやれ、幕閣に献上するのだからな・・・
細かくも厳しい注文。それで技術は磨かれたわけですね。
この脇差は尋常な姿ですが、刃文は沸のきらめきが顕著です。相州伝、わけても郷義弘を念頭に精鍛されたものだと思われます。
地鉄は詰んでいて、輝きの強い沸が厚く付いて、太い地景が躍動して、野趣があります。これが特色。
少し後の代の近江大掾忠廣や陸奥守忠吉らの地肌は詰み、粒だった地沸が均一について
米糠を蒔いたような独特の整備な地肌「小糠肌」になります。
ともあれ、パッとみて武蔵大掾忠廣、なんて当てることができたら、そりゃ大変な達人ですよ。

脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣
以上です。
いつもと同様、月刊『銀座情報』(令和6年3年号)掲載品からの出題です。
今回も二振、出題してみました。
如何でしょうか?

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