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​ 日本刀専門店銀座長州屋がご紹介する鐔、目貫、縁頭、小柄、笄、揃金具などの刀装具を種類別にまとめた商品検索ページです。基本的に価額表記のないものは売約済、もしくは非売品です。ご要望のお品がございましたら、お気軽にお問合せ下さい。(価額税込)

Copy right Ginza Choshuya

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近江八景図鍔(鐔) 無銘

近江八景図鍔(鐔) 無銘

Unsigned

 掌の中で名所を巡ることができる近江八景図鐔。魚子地の雲は大和絵のすやり霞さながらに異なる時間と空間を一つの画面に展開させる。魚子地によって磨地が更に黒々と艶めいて見え、金銀素銅の色絵が豊かに風景を彩る。波の表現も見事である。近江八景図は、中国北宋時代に成立した瀟湘八景図になぞらえて琵琶湖周辺の名勝八箇所を選んだもの。石山秋月、瀬田夕照、粟津晴嵐、矢橋帰帆、三井晩鐘、唐崎夜雨、堅田落雁、比良暮雪。この中に描かれている風景を見比べて探し出すのもまた楽しい。

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200,000

渾天儀・輪宝図鐔 銘 城州西陣住埋忠橘重義

渾天儀・輪宝図鐔 銘 城州西陣住埋忠橘重義

Shigeyoshi

 天体観測の道具である渾天儀は一度見たら忘れない印象深い形をしている。記憶に残るから沢山あるもののように思えるが、刀装具の画題としては珍しいものだ。お隣の中国では古来より天体の位置観測に使用され、日本へもたびたび入ってきたというが、それらが実際に観測に使用されたかどうかは定かではない。京の埋忠重義はどこで渾天儀を知ったのだろうか。文献で絵図を見て知ったのか、それとも実物を見たのだろうか。
錆色深く、鍛えの良い鉄地は撫角形。表裏に鋤出彫で描かれたのは渾天儀と輪宝。地底にうっすらと残った鏨の跡が、流れるような肌目と相俟って淡い陰影となる。輪宝の剣先形の文様が渾天儀の環にも連続して刻され、モチーフの反復が見られる 。軟体動物を彷彿させる架台の表現も面白い。

特別保存

330,000

花弁雁金透鐔 無銘 尾張

花弁雁金透鐔 無銘 尾張

Owari

 色合い黒々とした鍛えの良い鉄地の全面に細かな槌目を打ち施した真ん丸形。小肉のついた角耳の外周に浅い筋が見える。小判形の切羽台は上下がやや張り、耳よりも切羽台が薄くなる中低形。左右対称の意匠を垂直に透かす技法と共に典型的な尾張鐔の特徴を表している。中心に向かって四つの心葉形(猪目)を組み合わせ、対になった雁金で耳と繋いだ簡潔な意匠。優し気に見えるが強堅な鐔である。

特別保存

180,000

月下繋馬図鍔(鐔) 無銘 柳川派

月下繋馬図鍔(鐔) 無銘 柳川派

Yanagawa school

 銀色に輝くのは十八夜か、それとも十九夜の月であろうか。薄野原を照らす冴え冴えとした月明かりの下、馬が一頭草を食んでいる。裸馬ではあるが、放れ馬ではない。馬を繋ぐ綱は鐔の耳から裏側へまわり、朽ち木に括り付けられている。旅の途中であろうか、何か物語を感じさせる情景である。小肉のついた耳にまで撒かれた微細な魚子は整然として美しい。量感のある高彫の馬は、大きな目が印象的。柳川派の特徴を示す豊かな鬣と引き締まった力強い体躯をしている。柳川派の祖である直政は、横谷宗珉の直門。横谷式の赤銅魚子地高彫を得意とした。続く直光、直春、直連ら本家の頭領をはじめ門人達も代々その技を受け継いで栄えた。

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220,000

左右松透二重唐草文図鐔 無銘 神吉

左右松透二重唐草文図鐔 無銘 神吉

kamiyoshi


 お多福木瓜形に造り込んだ鉄地は、切羽台辺りを厚手に耳際を薄く仕立てた碁石形風で安定感があり、地面には鍛えた鎚の痕跡に加えて焼手による微妙な凹凸と流れるような肌合いが窺いとれる。装飾は肥後金工に特徴的な金線による鮮やかな二重唐草。色合い黒々とした鉄地に金の細線が映え、左右の大透とも絶妙の調和を成し、縄目鑢の施された漆黒の覆輪も上品である。江戸後期の肥後神吉(かみよし)派の特質が鮮明に示された出来となっている。

特別保存

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木瓜透鍔(鐔) 無銘 金山

木瓜透鍔(鐔) 無銘 金山

Kanayama

 小振りで引き締まった丸形に木瓜、十字、雁金を組み合わせた簡潔な透。叩き締められた強靭な地鉄には所々小粒の鉄骨が黒々と煌めく。茎穴の周囲を深く穿つ鏨跡は、衝撃を吸収するための実用上の工夫である。優し気な風情の曲線の中に実戦の厳しさを秘めた室町時代の作である。

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180,000

唐松繋図鍔(鐔) 銘 武州住吉正

唐松繋図鍔(鐔) 銘 武州住吉正

Yoshimasa

 慶事の特別な外装のために作られたのであろうか。青味を帯び、ずしりと重い上質の赤銅地の外周に菊花のような唐松文様を十三個繋ぎ置いた、目を引く意匠の鐔である。
 平地は丁寧な石目地仕上げ。唐松は、新芽と葉を真上から見て放射状にとらえ、中心を低くし、外側に向かって高さと厚みが増していく。中心は三星様の金色絵露象嵌が輝く。
 十三という数に何か意味があったのだろうか。縁日が十三日の虚空蔵菩薩(広大な宇宙のような無限の知恵と慈悲を持った菩薩)と何か関係があるのか。十三月が正月の異名であるとか、数え年十三歳の十三参り。十三を「とみ(富)」と読ませて縁起を担ぐなど。数にまつわるエピソードにも興味は尽きない。
鉄鐔の多い武州鐔にあって、上質の赤銅を厚く贅沢に使った本作はやはり特別の需に応えた作なのであろう。銘鑑に「松葉文透の鐔がある」という「透」は誤りで、本作のことを指していると思われる。

特別保存

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児島高徳図鐔  無銘 加賀後藤

児島高徳図鐔  無銘 加賀後藤

Kaga Goto

 元弘の変に敗れて隠岐に流されることとなった後醍醐天皇を救出すべく、闇に紛れて天皇行在所に忍び込んだ児島高徳だが、護りが固いため、桜の幹に「天莫空勾践(てんこうせんをむなしゅうすることなかれ) 時非無范蠡(ときにはんれいなきにしもあらず)」の詩を残して去った。天皇はこの文字を目にして勇気づけられ再起を図ったという。
 赤銅魚子地を闇夜に見立て、満開の桜を前に筆を手にする高徳の姿を極肉高に彫り出し、金銀の色絵を濃密に施し、高徳の厳しい表情をも精密に再現している。加賀前田家仕え、交代で金沢に居住した後藤覚乗や従兄弟の顕乗等は、加賀後藤と呼ばれている。

特別保存

600,000

鳩に鏃図鍔(鐔) 銘 後藤光久(花押)

鳩に鏃図鍔(鐔) 銘 後藤光久(花押)

Mitsuhisa

 切込みの浅い木瓜形を打ち返し耳とした一乗派が得意とする造り込み。陶板のように光沢のある鉄地には鳩と鏃の高彫象嵌。空には棚引く雲が金と赤銅の直線で簡潔に表わされている。写実的な鳩と鏃との異なる表現方法が興味深い。鳩は八幡宮を、弓矢は八幡太郎義家、あるいは武士そのものを連想させるが、本作は弓矢ではなく散らばった鏃である。一乗派には朽ちた木材や古瓦を散らし置いた図の鐔がある。光久も得意とした画題で、動乱の時代の影響か、無常観や寂寥感、郷愁を誘う。制作年はわからないが、本作もやはり世情を反映して、一つの時代の終わりを暗示しているのではないか。そう考えると大和絵風の雲にも何か含みがあるようにも思われる。光久は後藤一乗の兄是乗(光凞)の子で治左衛門家の六代目を襲った。一乗に似た作風の上手である。

特別保存

230,000

結綿透鐔 銘 尾州山吉兵〔桜花刻印〕

結綿透鐔 銘 尾州山吉兵〔桜花刻印〕

Yamakichibei

 円弧の毛彫りに点刻、槌目を施した地造りは陰影に富み、信家の影響を色濃く感じさせる。左右対称の陰透は、耳長兎を連想させるが、真綿を紐で束ねた結綿(ゆいわた)を意匠化したもの。慶事の引き出物や神前への供物として使われた。本作は、銘に桜花の刻印を打つことから「桜山吉」とも呼称される三代目山吉兵の鐔。江戸時代中期を代表する尾張の鐔工として戸田彦左衛門、福井次左衛門とともに「元禄三作(または「寛文三作」)の一人として賞美されている。
特別保存刀装具鑑定書(耳長兎図鐔)

特別保存

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鹿角竹虎図鐔 銘 平安城吉久

鹿角竹虎図鐔 銘 平安城吉久

Yoshihisa

 鹿角に蜂で俸禄。鹿角に蟻は禄有り。では鹿角に竹虎は何を意味するのであろう?
 大振りで鍛えの良い鉄地は耳に向かってやや肉を落とした竪丸形。その耳に切り取られた鹿角を廻らし、それよりもはるかに小さな虎を真鍮象嵌している。角には毛彫りと真鍮の線象嵌が施され、切り口は写実的。判じ絵であろうか、何とも不思議な図である。鹿の角から連想するものを書き連ねていてはたと気がついた。敵の侵入を防ぐために鹿角のように枝の先端を尖らせて外側に向けた障害物を逆茂木という。その別名は鹿砦(ろくさい)、または逆虎落(さかもがり)。これは武運長久の願いが込められたものではないだろうか。虎があまりに小さく可愛らしいのが何とも味わい深く面白い。吉久は平安城式象嵌を得意とした江戸時代初期の鐔工。

特別保存

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韃靼人図鐔  銘 保壽(花押)

韃靼人図鐔  銘 保壽(花押)

Yasutoshi

 未知の世界に棲む人々への興味は古くから強く、伝承に空想が加えられ、時には手長足長のような人物像まで創造されている。韃靼人(だったんじん)は中国大陸北部で狩猟生活をしていた民族。この鐔では、アフリカ系の印象を受ける姿格好とされているが、虎を従えているところには北方民族らしさも窺える。鶏頭太刀を備えているのは興味深い構成。鉄地を肉高く彫り出し、金銀朧銀素銅の象嵌を加え、写実味を高めている。保寿(やすとし)は水戸の額川派の金工。 

特別保存

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鉄線透図鍔 銘 長州萩住岡田宣治

鉄線透図鍔 銘 長州萩住岡田宣治

Nobuharu

 岡田宣治(のぶはる)は銘鑑に出ていない金工の一人。岡田家は長州鐔工界の名流であり、多くの門人を抱えてていたことであろう、そのような一人と考えて良い。

正阿弥流の肉彫地透に金布目象嵌を施した手法は先の友恒に通じて古風な面を漂わせつつも、洗練味があり、技量の高さを窺わせる。鉄線花は江戸中期以降の正確で精巧な彫刻、蔓の伸びる様子に動きがあり爽やか。

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竹林の賢人図鍔(鐔) 銘 百壽軒芳信花押

竹林の賢人図鍔(鐔) 銘 百壽軒芳信花押

Yoshinobu

 薩摩出身の百壽軒芳信は中国古典を題に採った華麗な高彫色絵を得意とする。本作も竹林を背景に穏やかにほほ笑む二人の文人が描かれている。微細な赤銅魚子地と磨地の対比が際立ち、金銀素銅の象嵌色絵が華やかに彩る。細部に独特の表現を見せる芳信。高台の地面は深い毛彫に点刻を加えて柔らかな質感を出し、異なる金属の色絵と点刻でゆったりと重なった衣を表した。竹は撓っても折れず、雪の中でも青々と清らか。君子を象徴する植物である。 

特別保存

450,000

菅公留守模様図鍔(鐔) 銘 肥前国住忠行作

菅公留守模様図鍔(鐔) 銘 肥前国住忠行作

Tadayuki

東風吹かば 思い起こせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな 『捨遺和歌集』
海ならず 湛える水の 底までに 清き心は 月ぞ照らさむ 『新古今和歌集』

 菅原道真が詠んだ歌二首を象徴する情景を表裏に描いた菅公留守模様図。鍛えの良い鉄地は錆色深く、滑らかな手触り。梅樹の背景に深く、浅く打ち込まれた槌目は霜を置いた土にも、降る雪にも見える。天に向かって伸びる細い枝にはふっくらとした高彫で可憐な梅花が咲き匂い、折れて節くれだった太い幹は高彫に荒々しい鏨運びで老木の肌を表している。裏面は、大宰府へ左遷の途上、備前国児島郡八浜で詠んだとされる「海ならず」の歌の景色。ただ一艘の船が行く先を彼方の月が煌々と照らしている。
 忠行は肥前刀工忠吉の末に連なり、嘉永三年三月日と年紀のある風景図鐔を遺している。

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菊桐唐草文図鐔 無銘 古鏡師

菊桐唐草文図鐔 無銘 古鏡師

Ko-kagamishi

 鋳型を利用した金属装飾は、古墳出土の銅鏡に例があるように歴史が古く、その古調な風合いが好まれて装剣小道具にも採り入れられている。地面の厚さが二ミリに満たない極薄に仕立てられた素朴な山銅地のこの鐔は、鋳型特有の砂地状の肌合いが渋い色調を呈し、桐紋や菊花、唐草文などを綺麗に浮かび上がらせている。土手耳部分には瑞雲状の鋤き込みがあり、これも地面に連続して不思議な味わいを成している。

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登龍門図鍔(鐔) 銘 松翠軒美章寫 玉川図

登龍門図鍔(鐔) 銘 松翠軒美章寫 玉川図

Yoshiaki

 鯉が滝を登り切れば龍になるという伝説を表した「登龍門図」は立身出世を祈念する好画題。(萩谷勝平にも同図がある。)大振りの鉄地木瓜形は耳に向かって肉を落とし、銀覆輪が品良く画面を際立たせる。激しく立ち上がる波は生き物のような流動性を見せる高彫。必死の形相で滝に挑む鯉。鱗は密実で、背鰭は繊細に翻る。丸太を重ねた橋は、甲鋤彫りを思わせる細かな鏨運びが見られ、雲は片切彫と毛彫の併用。広狭、深浅、強弱がはっきりとしたメリハリのある彫法で迫力ある場面を描いている。雲は低く垂れ込め、川面は波立ち、雨が激しく打ち付ける。この川を遡り、次第に狭く激しくなる流れに逆らい、ついには滝を登りきる。鯉は龍となって生まれ故郷の川に恵みの雨をもたらせたのかもしれない。水戸玉川派の美章には一柳友善との合作の龍虎図鐔や仙人図小柄がある。

特別保存

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蟻通宮図透鍔(鐔) 銘 忠重作

蟻通宮図透鍔(鐔) 銘 忠重作

Tadashige

 鬱蒼とした杉木立。手前に倒れ伏した馬と貴人。上手より歩み来る傘をさして灯火を持った人物。謡曲「蟻通」(*)に題を得た赤坂忠重の手になる透鐔である。鍛えよく、精良にして艶のある肉厚の鉄地は耳際でやや肉を落とし自然な柔らか味を醸し出す。鋸歯状に刻みだされた杉の木は先端鋭く、微細にして確かな描写の毛彫も味わい深い。赤坂鐔において人物を登場させて情景描写をする作は極めて少ない。赤坂歴代工のなかで、四代忠時以降最も優れた工人と評される忠重の貴重な一枚である。
(*)紀貫之は、和歌の神を祀る紀伊国玉津島明神に詣でる途中、突然の豪雨に見舞われる。乗っていた馬も倒れ、全く動かない。途方に暮れていると宮守が現れ、蟻通明神の社地を下馬せずに通ろうとした咎めであると言う。貫之が歌人であることを知ると宮守は、和歌を奉じて詫びると良いと勧める。貫之が「雨雲の立ち重なれる夜半なれば、蟻通しとも思うべきかは」と即興で歌を詠むと宮守は感心し、和歌の徳によって神は宥められ馬は再び立ち上がる。宮守は神楽を舞って貫之を寿ぎ、自分は蟻通明神であると告げて姿を消す。夜が明けると貫之は玉津島神社に向け旅立っていく。

特別保存

650,000

瓢箪透鍔(鐔) 無銘 薩摩

瓢箪透鍔(鐔) 無銘 薩摩

Satsuma

 刀豆(なたまめ)図透鐔や竹虎図透鐔でよく知られる薩摩金工小田派の作には本作同様の長い瓢箪を輪にした瓢透鐔がある。簡潔で力強い造形、周囲を浅く鋤いて鋤き出された葉には葉脈がくっきりと彫り出されている。程よく艶のある地鉄は図像の際で肉を落とし、引き締まった中にも丸みを帯び、柔らかな光を放つ。触れればひんやりとしてすべすべと滑らか。質実剛健の気風の中に潜む鋼が生み出す美を感じたい。

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280,000

獅噛雨龍唐草透鍔(鐔) 無銘 南蛮

獅噛雨龍唐草透鍔(鐔) 無銘 南蛮

Nanban

 上下に獅噛を、立体的に透かし彫られた唐草に絡まるように左右に二対の阿吽の龍を配した濃密な作。耳に向かって肉を落とし、西洋の剣にも装着可能な茎穴を持つ。一口に「南蛮」といっても作風は様々。本作は、形状、画題、彫法のすべてに異国情緒が感じられ、造作も丁寧で細やかである。

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100,000

乗牛読書図鍔(鐔) 銘 米澤住重斯

乗牛読書図鍔(鐔) 銘 米澤住重斯

Shigenori

 牛の背に後ろ向きで座り読書する人物は、中国の隋末に割拠した群雄の一人、李密(582年─619年)。官職を辞し、史記や漢書を学んでいた時期の姿である。大振りの竪丸形は空間を贅沢に使い、ゆったりとした趣。うっすら鋤き出された雲が流れ、重なり合った唐松の高彫には金象嵌の松毬が輝く。なだらかに柔らかく盛り上がった李密と牛の高彫。牛の背にはうっすらと背骨が浮かび、読書に熱中する主人を気遣うかのように見上げている。
裏は寂びた余韻を残す楼閣山水図。会津住重斯、または米澤住重斯と刻銘した菊池重斯には、薪を背負って読書する朱買臣図鐔(銀座長州屋蔵)という作がある。「ながら読書」は学習意欲が庶民層にまで浸透した江戸時代後期の世相の表れかもしれない。

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170,000

天地洲浜透図鐔  銘 法安

天地洲浜透図鐔  銘 法安

Houan

 戦国時代の尾張国清洲の武具鍛冶であった法安(ほうあん)は、古風で力強い鐔を製作して甲斐の浅野家に抱えられ、後にその移封に伴って紀伊和歌山に移住している。鍛え強い地鉄に独特の表情を生み出させた「うわばみ肌」の技術に優れており、その作品は数奇者垂涎の的となっている。この鐔が好例。鉄地を大振りの木瓜形に造り込み、叩き締めた鎚の痕跡を残した上に、焼手(やきて)腐(くさ)らかしにより地文を加え、裏は素朴な鑢地仕上げ。耳をわずかに打ち返し、天地に簡潔な透かしを施している。

特別保存

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桐樹透鍔(鐔) 無銘 勘四郎

桐樹透鍔(鐔) 無銘 勘四郎

Kanshiro

 合わせ鍛えの跡が見られる大振りで厚手の変り形。黒味の強い地鉄が描く桐樹は屈曲し、花房は左右に揺れ、変化に富んでいる。葉脈や花房には毛彫が施され、笄櫃の内側には鏨の跡が顕著。又七の意匠を元に独創を加味した勘四郎の、松や梅、桐の変り形地透は、後に赤坂や土佐明珍にも受け継がれていった優れた意匠である。

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茶筅・茗荷・菊花・雁金繋透鍔(鐔) 無銘 赤坂

茶筅・茗荷・菊花・雁金繋透鍔(鐔) 無銘 赤坂

Akasaka

 深い色合いの鍛え良い鉄地は大振りで堂々とした菊花形。茶筅、茗荷、菊の花弁を雁金で繋いだ伝統的な赤坂鐔の意匠であるが、どことなくモダンな印象を受ける。それぞれの文様の大きさと配置の妙か。互いに交差するうっすらと肉を付けた菊の花弁が大きな存在感を放つ。

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135,000

芦雁図鐔  銘 浩然居光中(花押) 明治二巳夏應石澤影壽君需

芦雁図鐔  銘 浩然居光中(花押) 明治二巳夏應石澤影壽君需

Mitsunaka

 嚮山光中は鷲田慎吉と称し、多彩な色金を組み合わせた精巧で緻密な平象嵌を得意とした名工。この鐔では、鉄地を用いて晩秋の水辺の風情とし、抑揚変化のある地面を微細な石目地に仕上げて霧の起ち込めた中に主題が浮かび上がるように表現している。金朧銀の平象嵌と繊細な毛彫による芦は水に揺れるように、雛鳥を目掛けて舞い降りる雁もまた繊細な毛彫平象嵌で羽毛までも再現。裏面は芦のみで、穂を金と銀の平象嵌で描き分けているのも味わい深い。 

特別保存

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松樹騎馬菊水図鍔(鐔) 銘 法安

松樹騎馬菊水図鍔(鐔) 銘 法安

Hoan

 大振りで光沢のある鍛えの良い鉄地。自然光で見るとやや赤みを帯び、所々黒味の強い錆色を呈する。薄手の造りだが、耳には数条の合わせ鍛えの跡を見せる。腐らかし(*)の技法により独特の雅味のある薄肉彫りを得意とした法安。絹糸よりも細い線は、溶けて消え入りそうでありながら確かに存在し、時に激しく渦を巻き飛沫を上げる。関連性があるのかないのか、画面に散りばめられた紋様は、菊水、菊の葉、海老(髭が異様に長い)、松、騎馬人物である。菊、海老、松は不老不死、延命長寿の祈念であろう。疾駆する馬と手に長い棒状のものを持った人物は何を表しているのか。そもそも全てに意味を見出そうとする姿勢にも問題があるのかもしれない。光の当たり方で鮮明にも見える薄肉彫りは、陽炎越しに景色を見ているような不思議な感覚が心地良い。法安は山吉兵とほぼ同時代に活躍し、共に尾張における在銘鐔の先駆けとなった名工である。
(*)腐らかし 鉄鐔における彫刻技法のひとつ。文様のところに耐酸性の塗料を塗っておき、その他の部分を腐食させ、文様を浮き上がらせたもの。焼手腐らかし、腐食彫りともいう。

特別保存

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七福神図鍔(鐔) 銘 長州萩之住友房作

七福神図鍔(鐔) 銘 長州萩之住友房作

Tomofusa

 七福神信仰は、室町時代後期、禅宗の隆盛とともに「竹林の七賢人」に倣って成立したという。それ以前は大黒天と恵比寿の二神が福神として盛んに祀られた。装剣小道具においても古後藤の目貫や小柄、笄にこの二神が見られ、大黒天と恵比寿が相撲をとる「福神相撲図」という面白い画題もある。延命長寿、商売繁盛という現生利益を祈念する七福神信仰は、その後広く庶民に浸透していった。江戸後期には新春の散策を兼ねた七福神巡りなども盛んにおこなわれるようになる。長州鐔の美点である鍛え良く黒味の強い鉄地を浅い打ち返しの丸形に仕立て、琵琶をかき鳴らす弁財天を囲むように毘沙門天、布袋、寿老人、大黒天がいる。寿老人は楽しげに踊り、空には鶴が舞う。竹と松を背後に福禄寿が盃を持ち、恵比寿は亀を呼び寄せる。何ともおめでたい図を鋤出高彫に象嵌色絵で彫り描いた、江戸後期の長州金工友房の作である。

特別保存

180,000

牡丹散図鐔 銘 木国鎮斎〔金印〕

牡丹散図鐔 銘 木国鎮斎〔金印〕

Chinsai

 大振りの隅入木瓜形は浅い打ち返し耳でゆったりとした趣。鍛え良く艶のある鉄地は陶板を思わせる質感。深く浅く全面に施された槌目の陰影、刻印風に深く彫り込んだ牡丹の花弁と葉は、少し遠ざけて眺めると霧の中に浮かぶ牡丹の花園といった風情。まさに仙境、夢幻の光景である。鎮斎は、紀州藩の抱え工上田正喜と同人。

特別保存

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波に燕図鐔 銘 隺乗斎寿宝美重(花押)

波に燕図鐔 銘 隺乗斎寿宝美重(花押)

Yoshishige

 寿宝美重は石黒政美の門人。寡作ながら、このような優品を遺していることから頗る技量の高い金工であったことが判る。画題は海を渡って飛来する燕。荒波に襲われたこともあろう、その自然の摂理を写実表現している。漆黒の赤銅地は澄んで清らか。その魚子地は綺麗に揃って無限に広がる大宇宙をも暗示。寄せ来る波の崩れ落ちる様子、陽を受けて輝く波飛沫は金の点象嵌で鮮やか。姿態を異にする五羽の燕はいずれも躍動感に満ち、互いに呼応する目線、あたかも波と戯れているかのような姿も正確だけでなく愛らしい。

特別保存

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渦文鍔(鐔) 無銘 古金工

渦文鍔(鐔) 無銘 古金工

Ko-kinko

 数百年の時が降り積もった山銅地。大振りでほぼ真丸形の鐔は耳に向かって肉を落とし、耳際の厚さは僅かに1.9mm。かつての所持者達から余程愛好されたのであろう。始めは太刀の拵用として作られ、後に打刀拵の鐔となった。小柄笄櫃の形も古風である。そしてなんといっても文様が興味深い。同心円状に連続して展開するS字状の渦文は大きな五重の波紋となる。渦文は地球上のあらゆるところに存在する最も古い文様。日本では縄文土器にも見られる。渦はシンプルかつ的確に水の流れといった生命の根源を表し、転じて子孫繁栄を意味する吉祥文となる。ラヴェルのボレロのように、繰り返されるシンプルな文様は抗しがたい魅力を放つ。

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放馬図鐔 銘 加藤重光(花押)

放馬図鐔 銘 加藤重光(花押)

Shigemitsu

 加藤重光は、狩野探幽に学んで同門四天王に数えられた会津藩御用絵師加藤遠沢の孫。会津では正阿弥流の風景図が隆盛しており、重光もまた風情のある絵画風の鐔を遺している。この鐔は、野に放牧されている馬の様子を自然な視線で捉えた作。質の良い鉄地を高彫とし、冬枯の木は赤銅地高彫、馬の身体は朧銀地高彫に金色絵、下草も金で静けさに包まれた空間を創出している。裏面は野に流れる小川に雪が舞い落ちている様子であろうか。

特別保存

180,000

井伊家家紋散図鍔(鐔)銘 濱野直寛(花押)

井伊家家紋散図鍔(鐔)銘 濱野直寛(花押)

Naohiro

 井桁紋と橘紋といえば「井伊の赤備え(あかぞなえ)」で勇名を馳せた彦根藩井伊家の定紋と替紋(旗印)であろう。徳川家康に見いだされ、徳川四天王と呼ばれるほどの武将となった初代彦根藩主井伊直政。あまりに勇猛果敢だったので、時に家康に諫められたという逸話があるが、諸大名との政治交渉にも抜群の手腕を発揮し家康の片腕となって江戸幕府の設立に貢献した。
 端正な赤銅魚子地四ツ木瓜形の四隅に猪目小透を配し、耳は厚く金色絵をかけて石目地仕上げとしている。井桁紋は高彫と金平象嵌。平象嵌はその上に更に魚子が撒かれている。橘紋は紋高い高彫に厚く金色絵がかけられ、微細な魚子地に浮かび上がって輝く。
 濱野直寛は、出羽山形藩主秋元但馬守の抱工佐野直好の門人。佐野一門は家紋の高彫色絵も得意としている。

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野晒図鍔 無銘 甚吾

野晒図鍔 無銘 甚吾

Jingo

人は死ねば皆髑髏となる。その無常観を表現した作。志水甚(じん)吾(ご)は肥後金工を代表する名流。素朴な鉄地や真鍮地、素銅地を巧みに処理し、個性的な構成で主題の本質に迫った。この鐔は、深みのある色合いの素(す)銅(あか)地を肉厚に地造りし、地面を中低に仕立て、高彫と毛彫に金の露(つゆ)象嵌(ぞうがん)を加えて枯れた野の様子を、赤(しゃく)銅(どう)の高彫象嵌で草の陰に朽ち果てて忘れられた人骨を彫り表わしている。印象的なのは裏面の銀平(ひら)象嵌(ぞうがん)による三日月。誰にも気づかれることなく、また葬られるわけでもなく、ただ野に屍を晒しているだけ。それを知るのは月のみか…。
特別保存刀装具鑑定書(甚吾)

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菅原透図鐔 銘 忠時作

菅原透図鐔 銘 忠時作

Tadatoki (Akasaka)

 赤坂八代目忠時の、特徴豊かな造り込みになる鐔。菅原道真の太宰府左遷に取材した歌舞伎『菅原伝授手習鑑』を表現した鐔。登場人物梅王丸、松王丸、桜丸を、それぞれの植物に擬え文様表現している。良く鍛えられた細やかな鉄地を切羽台の厚い碁石形に造り込み、透かしの切り口を鋭く仕上げて陰影を明瞭にし、要所に繊細な毛彫を加えて美観を高めている。耳には赤坂鐔の特徴でもある合せ鍛えの層状の肌が鮮明に現れている。

特別保存

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雁金繋透鍔(鐔) 無銘 京透

雁金繋透鍔(鐔) 無銘 京透

Kyo sukashi

 見事な構成と意匠である。切羽台を囲む四つの鐶が木瓜形を形作り、それぞれの鐶の内側に三羽の雁を、外側には七羽の雁を配し、鐶が蕨手を作る部分では雁を相対させている。雁は全部で五十羽。レース編みのような繊細で優美な曲線が鉄で出来ているということにただただ驚嘆する。耳には鉄骨が現れ、雅で優しげなだけではない、秘めた強靭な一面を感じさせて好ましい。時代の上がる京透の典型作である。

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160,000

文様散鍔(鐔) 無銘 平安城象嵌

文様散鍔(鐔) 無銘 平安城象嵌

Heianjo zogan

 そもそも犬が画題として取り上げられることが珍しい。しかも時代の上がる鐔に、である。画題としての犬は、じゃれあう仔犬や、座頭に絡む野犬、野晒とともに描かれる餓狼などが典型。本作のような猟犬が描かれるのは極めて珍しい。蓑笠を付けた人物の後を追う犬の全身から嬉しい楽しい気持ちが伝わってくる。絵風鐔への過渡期と考えられる作。引き締まった小振りの鉄地全体に展開する真鍮地高彫象嵌は、それぞれ関連性があるのか無いのか不思議な取り合わせである。しかも木賊を刈る人よりも巨大な海老やカマキリ、野菊など、何を基準としてそうなったのか、できることなら作者に聞いてみたい。現代の感覚では捉えきれない面白さが凝縮されている。実用の点からの不思議は小柄櫃に設けられた鉄地の当て金である。小柄のためなら柔らかい銅を用いた方が良いのではないか。全体の色合いを変えたくないという美観を追求してのことだったのだろうか。謎多き鐔の最大の謎を最後に。裏面の茎櫃周辺の一部に魚子が撒かれているのだ。赤銅魚子地の古金工や古美濃の鐔の切羽台には、試し打ちであろうか、稀に数条の魚子が撒かれていることがあるが、鉄地の切羽台に魚子が撒かれているのを初めて見た。滑り止め?どなたかご存知ならご教示願いたい。

保存

160,000

鶺鴒図鍔(鐔) 無銘 知識

鶺鴒図鍔(鐔) 無銘 知識

Chishiki

 引き締まった縦に長い丸形は知識派の一特徴を示す。青味を帯びた上質の赤銅地には、川霧であろうか、微細な石目が耳にまで施されている。水辺の境界を垂直に掘り下げ、片切彫のように地を斜めに削いだ輪郭線によって柔らかな風合いを見せる砂浜。鐔の表裏に一羽ずつ描かれた鶺鴒は、立体的に彫り出された高彫の周囲を浅く鋤き込み、その姿を更に強調している。剣尖の動きにたとえられる鶺鴒の尾の動き。他流派のことで示現流とはあまり関連が無いので、ここではしっとりした水辺の情景を描いているのであろう。鶺鴒は尾を上下に振りながら滑るように移動するさまが愛らしく、鳴き声も美しい。松葉の毛彫は絵筆で描いたかのように軽快。赤銅一色に彫刻の深浅強弱のみで表現された世界から、奥行きのある豊かな色彩が感じられる。知識派の金工は、後藤宗家で彫金の技術を学んだ者も多い。中でも兼置は最も技量高く、構図や構成においても優れた感性を発揮した名工である。

保存

160,000

 円相八環卍崩文図鐔  無銘 古金工

円相八環卍崩文図鐔  無銘 古金工

Ko kinko

 時代の上がる真鍮地に見られる、地金表面に現れた自然な文様と、意図的に加えられたであろう石目地状の鏨の痕跡が働き合い、真鍮地独特の渋い味わいを生み出している。八ツ木瓜形の耳際に蕨手状の環を廻らし、中央に円相を鋤彫している。装飾は鋤彫による線刻だけでなく、打ち込みによって卍崩しの文様と、五三桐紋を全面に散らしている。装飾という点で、応仁鐔などからの影響が考えられる魅力的な作である。 特別保存刀装具鑑定書(古金工)

特別保存

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葡萄図鐔 無銘 埋忠

葡萄図鐔 無銘 埋忠

Umetada

 墨筆を走らせたような強弱変化に富んだ線描写で、葡萄や九年母などを描いたのが埋忠明寿。線描とはいえ、金工細工での技術は独特の平象嵌。その洒落た表現は琳派の美意識に通じ、桃山時代の京文化に大いに影響を与えたのであった。この鐔も、明寿の技術と感性を伝えている作。漆黒の赤銅地を土手耳仕立ての木瓜形に造り込み、全面を微細な石目地に仕上げ、色合いを異にする金、銀、素銅、朧(おぼろ)銀(ぎん)の、表情豊かな平象嵌で描き表している。  

特別保存

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住吉透鍔(鐔) 無銘 金山

住吉透鍔(鐔) 無銘 金山

Kanayama

住吉の松の木間より眺むれば月落ちかかる淡路島山 源頼政

 左右に鳥居と磯馴松、上下に雲間月と帆掛け船。古来より歌枕として名高い摂津の住吉である。海に囲まれた日本の原風景ともいえる白砂青松はこの住吉の浜がモデルであった。抽象表現の多い金山鐔だが、中には本作のように画題が明確なものもある。小振りで引き締まった造形。黒味の強い手強い印象の鉄地には、耳のみならず、切羽台や平地にも粒状の鉄骨が現れている。端正でありながら野性味も感じさせる得難い作である。鉄鐔の収集家として知られる深沢敏彦翁の旧蔵品である。

特別保存

700,000

三聖吸酸図鍔(鐔) 銘 直丈

三聖吸酸図鍔(鐔) 銘 直丈

Naotake

 過剰と思えるほどの装飾だ。点景、背景、装束の文様が色味を変えた金象嵌で隙間を埋め尽くすようにちりばめられている。この作品の主題を装飾に埋もれさせて隠したがっているのではないかと思うほどだ。
 大振りの鉄地竪丸形の中央に薄肉彫りで酢の入った大甕を据え、それを囲むように釈迦(仏教)、孔子(儒教)、老子(道教)の三聖人が立っている。何やら楽しそうで、特に中央の釈迦は歯を見せて大笑いしている。「三聖吸酸(さんせいきゅうさん)」または「酢吸三教(すきゅうさんきょう)」と称されるこの図は、誰が舐めても酢は酸っぱいように、教義や宗教が違っても真理は一つであるということをわかりやすく表している。室町時代に中国から伝えられたこの図は禅画で好まれ、後に寺社建築の彫刻にも採られている。裏側は鋤き出された岩の間を清冽な水流が迸る。清らかな水の流れを遠近、高低で奥行きを出した金象嵌の草木が鮮やかに彩っている。
 武陽住と銘する直丈は、作品の類例は少ないが、本作の見事な象嵌技術や表情豊かな人物描写を見れば優れた金工であったことがよくわかる。

特別保存

280,000

雪輪に雪花文鍔(鐔) 銘 壽光(花押)

雪輪に雪花文鍔(鐔) 銘 壽光(花押)

Toshimitsu

 極々浅い打ち返し耳によって強調された、溶けかかった雪玉のような変り形。氷柱で覆われ、降り積もった雪の表面には薄肉彫りと高彫象嵌で美しい雪の結晶が描かれている。小柄櫃を縁取るのは雪輪文。江戸時代後期、古賀藩主土井利位(としつら)が雪の結晶を観察し、『雪花図説』にまとめ出版したところ、雪花文様(雪の結晶の文様)が大流行した。装剣小道具も大いにその影響を受け、一乗派や東龍斎派に雪花文を主題とした美しい作品があるが、本作からは凍てついた空気まで伝わってくる。渡辺壽光は東龍斎清壽の門人。風景から人物図まで師風をよく受け継いだ優れた作品を残した。

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虎渓三笑図鍔(鐔) 銘 九州肥後国遠山作

虎渓三笑図鍔(鐔) 銘 九州肥後国遠山作

Toyama

 橋のたもとで三人の人物が大笑いしている。虎渓は中国江西省の景勝地廬山の渓流。三人の人物は、中央が慧遠法師、向かって右側が陶淵明、もう一人が陸修静である。この地に隠棲した慧遠法師は、来客が帰るときは貴賤の別なく見送りをしたが、決して虎渓に架かる橋を渡ることはしなかった。ある日、訪ねてきた陶淵明と陸修静とともに時を忘れて清談に興じ、二人を見送る際もつい話に熱中し、気付いた時には橋を渡ってしまっていて三人で大笑いした、という故事。物事に熱中するあまりほかの全てのことを忘れてしまう事のたとえである。引き締まった竪丸形は鍛え良く、手強い印象。遠山派は小透や布目象嵌を施した大胆で簡潔な意匠が多いのだが、高彫でこれほど詳細な描写の絵風鐔は極めて珍しい。重厚でありながらどこまでも明朗な雰囲気を纏っている。据紋式高彫象嵌で特色ある動植物や人物図を彫った遠山頼次の作であろう。

特別保存

400,000

香炉・松皮菱紋透鍔(鐔) 無銘 金山

香炉・松皮菱紋透鍔(鐔) 無銘 金山

Kanayama

 掌に収まってしまう小さな鐔である。しかしこの中に時代の上がる金山鐔の魅力がギュッと詰まっている。滑らかな感触で、黒味を帯びた鍛えの良い地鉄には一際黒く粒状の鉄骨が現れている。引き締まった縦長四ツ木瓜形の耳は厚く、切羽台に向かってやや薄くなる中低の造り込み。入隅に猪目透を配した意匠は鎌倉期の太刀鐔の様式でもある。切羽台は刀への装着の際に赤銅で補完したもの。透の一部に割れや欠けが見られるが、数百年をかけて、この鐔が代々の所有者にいかに愛好されてきたかを如実に物語っている。金山鐔と称されるものの中で最も時代の上がるものであろう。

特別保存

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琴高仙人図鍔(鐔) 銘 正壽軒知久

琴高仙人図鍔(鐔) 銘 正壽軒知久

Tomohisa

 琴の名人琴高仙人は古代中国の仙人。ある日、弟子に龍の子を捕まえると約束する。約束の日、琴高は鯉の背に乗って水中から現れたという。滝を昇りきれば龍になるといわれている鯉は龍の子と言えなくもない。表側には激流に逆らい川を泳ぐ鯉とその背にまたがり巻物を広げる琴高仙人。見上げた視線の先は裏側に彫り描かれた滝である。琴高仙人が手にしている巻物には龍門の場所が記されていて、「さあ、お前はこれからあの滝を昇りきって龍になるのだ。」とでも言っているようだ。鯉の目線がやや後ろを向いていて、困惑顔に見えるのも面白い。
 柔らかな衣の質感、その中に確かに肉体が存在すると感じさせる肉置き。髪や髭、表情や指先まで丁寧で詳細な描写が見事である。赤銅高彫の鯉は、なだらかに抑揚をつけた肉付けに写実的な鱗や鰭、顔周りには有るか無きかの毛彫りを添えて生き生きと描かれている。正壽軒知久は、水戸藩抱え工の玉川吉長の門人。

特別保存

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蜘蛛の糸透鐔 無銘 神吉

蜘蛛の糸透鐔 無銘 神吉

Kamiyoshi

 八角形の蜘蛛の巣を菊花形で囲んだこの意匠は林家、神吉家に見られるもの。精良な地鉄は黒味が強く強靭な印象。櫃穴と放射状に広がる縦糸の線は細く、らせん状の横糸はそれよりも太い。透かしの線は垂直で心地良い緊張感を漂わせている。「知勇図」は知略をめぐらす蜘蛛と勇を誇る蜂の図。では、美しい菊花と蜘蛛の巣は何と呼ぼうか。精緻で美しい透鐔である。

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75,000

月に時鳥図鍔(鐔) 無銘 東龍斎派

月に時鳥図鍔(鐔) 無銘 東龍斎派

Toryusai school

 大振りの撫角形はほんの少し下部が張り、全面に槌目を施して打ち返し耳となる。江戸後期の東龍斎派によくみられる手法。表側には月光に輝く雲間を鳴きながら飛ぶ時鳥。夏を告げるこの鳥の初音を聞こうと古人は一晩中起きていたという。何とも優雅なことだ。とはいえ、本作の時鳥は、喉も裂けよ、とばかりの必死の形相にも見える。「不如帰去」と血を吐くまで鳴いたという杜宇の伝説を想起させる。裏面は銀象嵌の大きな朧月。初夏の花、卯の花や橘と共に歌に詠まれる時鳥。橘の香る月夜の情景を切り取った作。

保存

75,000

竹生島図鐔 銘 山城国伏見住金家

竹生島図鐔 銘 山城国伏見住金家

Kaneie

 金家は、禅に題を得た図柄や、達磨、李白など歴史的な人物を鐔に彫り描いたが、同じ鐔面に金家が生きた時代の京都周辺の風景を採り入れているものがある。主題も、歴史や伝説といった時の彼方のものばかりではなく、飛脚図や曳舟図のように、より身近な出来事への興味をも示していると思われ、同時代の装剣小道具の製作者の中においては歴史を研究する上でも興味深い作品を遺した識者で、特異な存在と言えるであろう。
 この鐔は、京にほど近い近江国琵琶湖が舞台とされた謡曲『竹生島(ちくぶじま)』を主題とした作。『竹生島』は室町時代初期の金春禅竹作と伝えられ、明るく軽快な内容が好まれて演じられたという。
 古甲冑師鐔のように鍛えの頗る良い鉄地は、叩き締めた鎚の痕跡が明瞭に残されて景色となっている。この鍛え肌も拳形とも呼ばれる独特の形状と共に金家の特質。さらに、打ち返された耳が抑揚変化し、鐔という画面を無限の空域へと連続させている。表は琵琶湖畔で左手網(さであみ)を肩に小鮎漁に向かう海女姿の弁財天。謡曲『竹生島』では老漁師と海女が主題とされているが、金家は実際に取材した海女一人を、遠く眺める山並みを背景として印象深く彫り描いている。足元は砂浜に寄せる波であろう、微かな毛彫表現。一方裏面は夜の湖面。謡曲『竹生島』よりイメージした、月に輝く湖面を跳躍する兎。いずれも鍛着部が判らないほどに精巧な共鉄象嵌(ともがねぞうがん)。僅かに銀象嵌を加えている。
金家が見たのは、そして彫り描いた月は、伝説と現実が交わる夢玄への入口に他ならない。

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三盛角紋透かし図鐔 無銘 古甲冑師

三盛角紋透かし図鐔 無銘 古甲冑師

Ko-kacchushi

 カランと乾いたような響音を呈する鍛え強い鉄地を平坦に仕立て、簡潔な透かしを施して装飾とした、戦国武将好みの鐔。薄手に仕立てられた鉄地の色合いが黒く、鍛えた鎚の痕跡によって渋い光沢があり、耳は打ち返しによって桶(おけ)底(そこ)に仕立てられて緊張感に満ちている。甲冑師(かっちゅうし)鐔は、耳を桶底状、あるいは環状(かんじょう)構造にすることによって堅牢さが高められている。この鐔は小柄笄の櫃穴もなく、質素でありながら力強さが魅力の一枚である。

特別保存刀装具鑑定書(古甲冑師) 

特別保存

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瓢朝顔図鐔 銘 信家

瓢朝顔図鐔 銘 信家

Nobuie

 桃山三名人の一人に数えられている信家(のぶいえ)は、永禄から天正年間の尾張清洲で活躍した信家以降複数人の存在が考察されているが、戦国時代という背景から活動の記録が極めて少ない。このように在銘作が遺されている割りに謎めいた存在である点も魅力の一つで、江戸時代から既に研究の対象とされている。作行は、切羽台に比較して耳際の厚い頑強な鉄地の仕立てで、文様の打ち込みや毛彫、筋彫などを組み合わせた簡潔ながら複雑な描法。図柄は葡萄や瓢箪、朝顔など蔓様の植物を唐草風に鐔全面に施したものが多く、また、鋤彫により御題目文字などを加えた作もある。これら毛彫鋤彫が、錆び色黒く光沢のある地鉄に現れた鉄骨(てっこつ)など素材そのものの働きと複合し、地相に動感を生み出しているところが見どころ。特に初期の作には室町時代の甲冑師鐔にも通じる素朴な美観が備わっており、時代の降った写し物にはない景色が愛鐔家垂涎の的となっている。
 この鐔が典型。銘は所謂放れ銘。古くから戦国時代の実用的な拵に合うと評価されているようにバランス良く、強い衝撃にも耐え得るよう耳際を厚くした構造も覇気に富んでいる。鍛えた鎚の痕跡を残す地面も、色合い黒くねっとりとした渋い光沢で一段と強味が感じられる。耳の所々に現れているさらに色の黒い鉄骨には山吉兵の鐔に見られる小さな炭籠りを想わせる働きも窺え、地の抑揚に能動的変化を与えている。図柄は夏の陽を受けて無限に蔓を延ばして行くかのような、永遠の生命を暗示する瓢箪と朝顔。この両者は信家を説明する上で外すことのできない図で、ここでも地肌に溶け込むような素朴な毛彫の組み合わせとされている。

特別保存

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