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​ 日本刀専門店銀座長州屋がご紹介する鐔、目貫、縁頭、小柄、笄、揃金具などの刀装具を種類別にまとめた商品検索ページです。基本的に価額表記のないものは売約済、もしくは非売品です。ご要望のお品がございましたら、お気軽にお問合せ下さい。(価額税込)

Copy right Ginza Choshuya

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桜花繋透鍔(鐔) 無銘 金山

桜花繋透鍔(鐔) 無銘 金山

Kanayama

 錆色深く大振りで堂々とした鐔。小肉のついた角耳には筋状の鍛えの跡がある。左右対称に配された文様は金山鐔には珍しい桜繋。儚さ、美しさ、潔さ。桜が象徴する様々を武士もまた思ったことがあっただろう。

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220,000

釣鐘透図鐔 無銘 金山

釣鐘透図鐔 無銘 金山

Kanayama

 金山(かなやま)鐔に比較的多くみられる釣鐘の図柄は、簡潔で素朴ながら力強い構成とされている。

本作は、その中でも特に肉が厚く、がっしりと造り込まれ、透かしの切り口も鋭く仕立てられた特別な作と考えられる。切羽台に比較してわずかに耳際が厚く、耳の線も同様に幅広く張りがある。

鍛え強い鋼は色合い黒々として渋い味わいがあり、鍛えた鎚の痕跡が焼手によって地に景色を成し、耳には地面を突き破るように粒状の鉄骨(てっこつ)が無数に点在し、色の黒い光沢を呈して迫力がある。
特別保存刀装具鑑定書(金山)

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海老獲猿図鐔 銘 長門萩住中井友恒

海老獲猿図鐔 銘 長門萩住中井友恒

Tomotsune

 中井善助友(とも)恒(つね)は毛利家に抱えられた長州鐔を代表する名工。山水や植物に題を得ることの多い長州鐔にあって、友恒の作は独創に富んで評価が高い。

水辺に垂れる老松の枝から海老に手を伸ばす猿猴に取材した図は、何を暗喩しているのであろうか、興味一入である。裏面は広々とした牧場に放された馬で、山陰には花が咲いて春の暖かさが感じられる場面。色合い黒い鉄地は石目地とされ、高彫に金、朧(おぼろ)銀(ぎん)、素(す)銅(あか)の象嵌を施した主題を浮かび上がらせている。

特別保存

350,000

牧童図鐔 銘 弘光(花押)

牧童図鐔 銘 弘光(花押)

Hiromitsu

 弘光(ひろみつ)は、歴史上の人物や風物に題を得て動感豊かな高肉彫に表現するを得意とした打越弘壽の門人。この鐔は、禅の教え十牛図を想わせる図柄構成ながら、蜻蛉を添えているところなどいかにも牧歌的であり、また松の古樹も力強い印象があって、農村に取材した風俗図として完成度の高い作となっている。

色合いの黒い赤銅地を石目地に仕上げ、量感のある高彫に金銀の色絵を的確に施し、細部まで彫り込んで牧童に自然な動きを与えている。裏面は遠望の山並で、これも美しい。

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近江八景図鍔(鐔) 無銘

近江八景図鍔(鐔) 無銘

Unsigned

 掌の中で名所を巡ることができる近江八景図鐔。魚子地の雲は大和絵のすやり霞さながらに異なる時間と空間を一つの画面に展開させる。魚子地によって磨地が更に黒々と艶めいて見え、金銀素銅の色絵が豊かに風景を彩る。波の表現も見事である。近江八景図は、中国北宋時代に成立した瀟湘八景図になぞらえて琵琶湖周辺の名勝八箇所を選んだもの。石山秋月、瀬田夕照、粟津晴嵐、矢橋帰帆、三井晩鐘、唐崎夜雨、堅田落雁、比良暮雪。この中に描かれている風景を見比べて探し出すのもまた楽しい。

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文様散鍔(鐔) 無銘 平安城象嵌

文様散鍔(鐔) 無銘 平安城象嵌

Heianjo zogan

 そもそも犬が画題として取り上げられることが珍しい。しかも時代の上がる鐔に、である。画題としての犬は、じゃれあう仔犬や、座頭に絡む野犬、野晒とともに描かれる餓狼などが典型。本作のような猟犬が描かれるのは極めて珍しい。蓑笠を付けた人物の後を追う犬の全身から嬉しい楽しい気持ちが伝わってくる。絵風鐔への過渡期と考えられる作。引き締まった小振りの鉄地全体に展開する真鍮地高彫象嵌は、それぞれ関連性があるのか無いのか不思議な取り合わせである。しかも木賊を刈る人よりも巨大な海老やカマキリ、野菊など、何を基準としてそうなったのか、できることなら作者に聞いてみたい。現代の感覚では捉えきれない面白さが凝縮されている。実用の点からの不思議は小柄櫃に設けられた鉄地の当て金である。小柄のためなら柔らかい銅を用いた方が良いのではないか。全体の色合いを変えたくないという美観を追求してのことだったのだろうか。謎多き鐔の最大の謎を最後に。裏面の茎櫃周辺の一部に魚子が撒かれているのだ。赤銅魚子地の古金工や古美濃の鐔の切羽台には、試し打ちであろうか、稀に数条の魚子が撒かれていることがあるが、鉄地の切羽台に魚子が撒かれているのを初めて見た。滑り止め?どなたかご存知ならご教示願いたい。

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160,000

鶺鴒図鍔(鐔) 無銘 知識

鶺鴒図鍔(鐔) 無銘 知識

Chishiki

 引き締まった縦に長い丸形は知識派の一特徴を示す。青味を帯びた上質の赤銅地には、川霧であろうか、微細な石目が耳にまで施されている。水辺の境界を垂直に掘り下げ、片切彫のように地を斜めに削いだ輪郭線によって柔らかな風合いを見せる砂浜。鐔の表裏に一羽ずつ描かれた鶺鴒は、立体的に彫り出された高彫の周囲を浅く鋤き込み、その姿を更に強調している。剣尖の動きにたとえられる鶺鴒の尾の動き。他流派のことで示現流とはあまり関連が無いので、ここではしっとりした水辺の情景を描いているのであろう。鶺鴒は尾を上下に振りながら滑るように移動するさまが愛らしく、鳴き声も美しい。松葉の毛彫は絵筆で描いたかのように軽快。赤銅一色に彫刻の深浅強弱のみで表現された世界から、奥行きのある豊かな色彩が感じられる。知識派の金工は、後藤宗家で彫金の技術を学んだ者も多い。中でも兼置は最も技量高く、構図や構成においても優れた感性を発揮した名工である。

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160,000

 円相八環卍崩文図鐔  無銘 古金工

円相八環卍崩文図鐔  無銘 古金工

Ko kinko

 時代の上がる真鍮地に見られる、地金表面に現れた自然な文様と、意図的に加えられたであろう石目地状の鏨の痕跡が働き合い、真鍮地独特の渋い味わいを生み出している。八ツ木瓜形の耳際に蕨手状の環を廻らし、中央に円相を鋤彫している。装飾は鋤彫による線刻だけでなく、打ち込みによって卍崩しの文様と、五三桐紋を全面に散らしている。装飾という点で、応仁鐔などからの影響が考えられる魅力的な作である。 特別保存刀装具鑑定書(古金工)

特別保存

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葡萄図鐔 無銘 埋忠

葡萄図鐔 無銘 埋忠

Umetada

 墨筆を走らせたような強弱変化に富んだ線描写で、葡萄や九年母などを描いたのが埋忠明寿。線描とはいえ、金工細工での技術は独特の平象嵌。その洒落た表現は琳派の美意識に通じ、桃山時代の京文化に大いに影響を与えたのであった。この鐔も、明寿の技術と感性を伝えている作。漆黒の赤銅地を土手耳仕立ての木瓜形に造り込み、全面を微細な石目地に仕上げ、色合いを異にする金、銀、素銅、朧(おぼろ)銀(ぎん)の、表情豊かな平象嵌で描き表している。  

特別保存

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住吉透鍔(鐔) 無銘 金山

住吉透鍔(鐔) 無銘 金山

Kanayama

住吉の松の木間より眺むれば月落ちかかる淡路島山 源頼政

 左右に鳥居と磯馴松、上下に雲間月と帆掛け船。古来より歌枕として名高い摂津の住吉である。海に囲まれた日本の原風景ともいえる白砂青松はこの住吉の浜がモデルであった。抽象表現の多い金山鐔だが、中には本作のように画題が明確なものもある。小振りで引き締まった造形。黒味の強い手強い印象の鉄地には、耳のみならず、切羽台や平地にも粒状の鉄骨が現れている。端正でありながら野性味も感じさせる得難い作である。鉄鐔の収集家として知られる深沢敏彦翁の旧蔵品である。

特別保存

700,000

三聖吸酸図鍔(鐔) 銘 直丈

三聖吸酸図鍔(鐔) 銘 直丈

Naotake

 過剰と思えるほどの装飾だ。点景、背景、装束の文様が色味を変えた金象嵌で隙間を埋め尽くすようにちりばめられている。この作品の主題を装飾に埋もれさせて隠したがっているのではないかと思うほどだ。
 大振りの鉄地竪丸形の中央に薄肉彫りで酢の入った大甕を据え、それを囲むように釈迦(仏教)、孔子(儒教)、老子(道教)の三聖人が立っている。何やら楽しそうで、特に中央の釈迦は歯を見せて大笑いしている。「三聖吸酸(さんせいきゅうさん)」または「酢吸三教(すきゅうさんきょう)」と称されるこの図は、誰が舐めても酢は酸っぱいように、教義や宗教が違っても真理は一つであるということをわかりやすく表している。室町時代に中国から伝えられたこの図は禅画で好まれ、後に寺社建築の彫刻にも採られている。裏側は鋤き出された岩の間を清冽な水流が迸る。清らかな水の流れを遠近、高低で奥行きを出した金象嵌の草木が鮮やかに彩っている。
 武陽住と銘する直丈は、作品の類例は少ないが、本作の見事な象嵌技術や表情豊かな人物描写を見れば優れた金工であったことがよくわかる。

特別保存

280,000

雪輪に雪花文鍔(鐔) 銘 壽光(花押)

雪輪に雪花文鍔(鐔) 銘 壽光(花押)

Toshimitsu

 極々浅い打ち返し耳によって強調された、溶けかかった雪玉のような変り形。氷柱で覆われ、降り積もった雪の表面には薄肉彫りと高彫象嵌で美しい雪の結晶が描かれている。小柄櫃を縁取るのは雪輪文。江戸時代後期、古賀藩主土井利位(としつら)が雪の結晶を観察し、『雪花図説』にまとめ出版したところ、雪花文様(雪の結晶の文様)が大流行した。装剣小道具も大いにその影響を受け、一乗派や東龍斎派に雪花文を主題とした美しい作品があるが、本作からは凍てついた空気まで伝わってくる。渡辺壽光は東龍斎清壽の門人。風景から人物図まで師風をよく受け継いだ優れた作品を残した。

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虎渓三笑図鍔(鐔) 銘 九州肥後国遠山作

虎渓三笑図鍔(鐔) 銘 九州肥後国遠山作

Toyama

 橋のたもとで三人の人物が大笑いしている。虎渓は中国江西省の景勝地廬山の渓流。三人の人物は、中央が慧遠法師、向かって右側が陶淵明、もう一人が陸修静である。この地に隠棲した慧遠法師は、来客が帰るときは貴賤の別なく見送りをしたが、決して虎渓に架かる橋を渡ることはしなかった。ある日、訪ねてきた陶淵明と陸修静とともに時を忘れて清談に興じ、二人を見送る際もつい話に熱中し、気付いた時には橋を渡ってしまっていて三人で大笑いした、という故事。物事に熱中するあまりほかの全てのことを忘れてしまう事のたとえである。引き締まった竪丸形は鍛え良く、手強い印象。遠山派は小透や布目象嵌を施した大胆で簡潔な意匠が多いのだが、高彫でこれほど詳細な描写の絵風鐔は極めて珍しい。重厚でありながらどこまでも明朗な雰囲気を纏っている。据紋式高彫象嵌で特色ある動植物や人物図を彫った遠山頼次の作であろう。

特別保存

400,000

香炉・松皮菱紋透鍔(鐔) 無銘 金山

香炉・松皮菱紋透鍔(鐔) 無銘 金山

Kanayama

 掌に収まってしまう小さな鐔である。しかしこの中に時代の上がる金山鐔の魅力がギュッと詰まっている。滑らかな感触で、黒味を帯びた鍛えの良い地鉄には一際黒く粒状の鉄骨が現れている。引き締まった縦長四ツ木瓜形の耳は厚く、切羽台に向かってやや薄くなる中低の造り込み。入隅に猪目透を配した意匠は鎌倉期の太刀鐔の様式でもある。切羽台は刀への装着の際に赤銅で補完したもの。透の一部に割れや欠けが見られるが、数百年をかけて、この鐔が代々の所有者にいかに愛好されてきたかを如実に物語っている。金山鐔と称されるものの中で最も時代の上がるものであろう。

特別保存

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琴高仙人図鍔(鐔) 銘 正壽軒知久

琴高仙人図鍔(鐔) 銘 正壽軒知久

Tomohisa

 琴の名人琴高仙人は古代中国の仙人。ある日、弟子に龍の子を捕まえると約束する。約束の日、琴高は鯉の背に乗って水中から現れたという。滝を昇りきれば龍になるといわれている鯉は龍の子と言えなくもない。表側には激流に逆らい川を泳ぐ鯉とその背にまたがり巻物を広げる琴高仙人。見上げた視線の先は裏側に彫り描かれた滝である。琴高仙人が手にしている巻物には龍門の場所が記されていて、「さあ、お前はこれからあの滝を昇りきって龍になるのだ。」とでも言っているようだ。鯉の目線がやや後ろを向いていて、困惑顔に見えるのも面白い。
 柔らかな衣の質感、その中に確かに肉体が存在すると感じさせる肉置き。髪や髭、表情や指先まで丁寧で詳細な描写が見事である。赤銅高彫の鯉は、なだらかに抑揚をつけた肉付けに写実的な鱗や鰭、顔周りには有るか無きかの毛彫りを添えて生き生きと描かれている。正壽軒知久は、水戸藩抱え工の玉川吉長の門人。

特別保存

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蜘蛛の糸透鐔 無銘 神吉

蜘蛛の糸透鐔 無銘 神吉

Kamiyoshi

 八角形の蜘蛛の巣を菊花形で囲んだこの意匠は林家、神吉家に見られるもの。精良な地鉄は黒味が強く強靭な印象。櫃穴と放射状に広がる縦糸の線は細く、らせん状の横糸はそれよりも太い。透かしの線は垂直で心地良い緊張感を漂わせている。「知勇図」は知略をめぐらす蜘蛛と勇を誇る蜂の図。では、美しい菊花と蜘蛛の巣は何と呼ぼうか。精緻で美しい透鐔である。

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75,000

月に時鳥図鍔(鐔) 無銘 東龍斎派

月に時鳥図鍔(鐔) 無銘 東龍斎派

Toryusai school

 大振りの撫角形はほんの少し下部が張り、全面に槌目を施して打ち返し耳となる。江戸後期の東龍斎派によくみられる手法。表側には月光に輝く雲間を鳴きながら飛ぶ時鳥。夏を告げるこの鳥の初音を聞こうと古人は一晩中起きていたという。何とも優雅なことだ。とはいえ、本作の時鳥は、喉も裂けよ、とばかりの必死の形相にも見える。「不如帰去」と血を吐くまで鳴いたという杜宇の伝説を想起させる。裏面は銀象嵌の大きな朧月。初夏の花、卯の花や橘と共に歌に詠まれる時鳥。橘の香る月夜の情景を切り取った作。

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75,000

抱茗荷雁金透鍔(鐔) 無銘 尾張

抱茗荷雁金透鍔(鐔) 無銘 尾張

Owari

鍛え良く靭性を感じさせる地鉄は黒々として力強い。大振りの真ん丸形の内側は菊花形。所々うっすらと筋状の鍛えの跡が見て取れ、槌目のそばには、ごく小さな粒状の鉄骨が、深い錆色よりさらに黒く輝く。両櫃孔を抱き茗荷で形作り、切羽台の上下にも抱き茗荷を配した左右対称の意匠構成。雁金と菊花透で囲まれた空間は、雲のようにも雪輪のようにも見える。反復される緻密で明快な文様が印象深く心に残る。

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200,000

鶯宿梅図鍔(鐔) 無銘 林

鶯宿梅図鍔(鐔) 無銘 林

Hayashi

 太い枝へと繋がるこの不定形な変り形を考案したのは一体誰だったのか。目の前にある現実の風景というよりも遠い記憶の中の情景のようである。「勅なればいともかしこき鶯の宿はと問えばいかが答えむ」紀貫之の娘が詠んだという歌が由来と伝えられる「鶯宿梅図」は春を象徴する縁起の良い取り合わせでもある。耳に向かってやや肉を落とした靭性を感じさせる地鉄は、鉄砲鍛冶出身の林又七を祖とする肥後林派の美点の一つである強靭な鉄質を体現している。丸みを帯びた緩やかな曲線の耳とは対照的に梅の枝はごつごつと屈曲し、小さな丸い蕾がついた枝先は鋭く耳に刺さる。丁寧な毛彫が施された可憐な梅と小さな愛らしい鶯。馥郁たる香りと澄んだ鳴き声が呼び覚まされる。

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250,000

遠見松透図鐔 無銘 二子山

遠見松透図鐔 無銘 二子山

Futagoyama school

 柳生鐔や信家鐔を手本とした鐔を製作した二(ふた)子山(こやま)則亮の、時代の上がる尾張鐔の特長を示した、古風な趣を漂わせる作。鍛え強い上質の鋼を、切羽台に比較して耳際が厚くがっしりと造り込んでいる。

耳の周囲に現れた筋状と粒状の鉄骨が強い光沢を呈している。鎚で叩き締めたような地面も色合い黒く、遠見に松の茂る様子が簡潔な文様として透かされて味わいが格別。

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正月飾図鐔  銘 如柳(花押)

正月飾図鐔  銘 如柳(花押)

Jyochiku school

 如(じょ)柳(りゅう)は村上如竹の門人で、師の技術を受け継いで精巧な作品を遺している。正月飾を彫り描いたこの鐔が良い例で、漆黒の赤銅地を磨地に仕上げ、海老の地色を想定して量感のある高彫に素銅色絵とし、目玉は赤銅、手足の所々に金の色絵を微かに加え、全体に毛彫と三角鏨を打ち込んで甲羅の表情や手足触覚の動きを表現している。

注連縄、若松、裏面の竹と万両は、暖か味のある金、銀を含ませた色合いの異なる金、素銅、赤味の強い緋色(ひいろ)銅(どう)による平象嵌を駆使して繊細。勝栗と榧(かや)は高彫に金色絵。いずれも緻密な描写である。 

特別保存

450,000

渾天儀・輪宝図鐔 銘 城州西陣住埋忠橘重義

渾天儀・輪宝図鐔 銘 城州西陣住埋忠橘重義

Shigeyoshi

 天体観測の道具である渾天儀は一度見たら忘れない印象深い形をしている。記憶に残るから沢山あるもののように思えるが、刀装具の画題としては珍しいものだ。お隣の中国では古来より天体の位置観測に使用され、日本へもたびたび入ってきたというが、それらが実際に観測に使用されたかどうかは定かではない。京の埋忠重義はどこで渾天儀を知ったのだろうか。文献で絵図を見て知ったのか、それとも実物を見たのだろうか。
錆色深く、鍛えの良い鉄地は撫角形。表裏に鋤出彫で描かれたのは渾天儀と輪宝。地底にうっすらと残った鏨の跡が、流れるような肌目と相俟って淡い陰影となる。輪宝の剣先形の文様が渾天儀の環にも連続して刻され、モチーフの反復が見られる 。軟体動物を彷彿させる架台の表現も面白い。

特別保存

330,000

花弁雁金透鐔 無銘 尾張

花弁雁金透鐔 無銘 尾張

Owari

 色合い黒々とした鍛えの良い鉄地の全面に細かな槌目を打ち施した真ん丸形。小肉のついた角耳の外周に浅い筋が見える。小判形の切羽台は上下がやや張り、耳よりも切羽台が薄くなる中低形。左右対称の意匠を垂直に透かす技法と共に典型的な尾張鐔の特徴を表している。中心に向かって四つの心葉形(猪目)を組み合わせ、対になった雁金で耳と繋いだ簡潔な意匠。優し気に見えるが強堅な鐔である。

特別保存

180,000

月下繋馬図鍔(鐔) 無銘 柳川派

月下繋馬図鍔(鐔) 無銘 柳川派

Yanagawa school

 銀色に輝くのは十八夜か、それとも十九夜の月であろうか。薄野原を照らす冴え冴えとした月明かりの下、馬が一頭草を食んでいる。裸馬ではあるが、放れ馬ではない。馬を繋ぐ綱は鐔の耳から裏側へまわり、朽ち木に括り付けられている。旅の途中であろうか、何か物語を感じさせる情景である。小肉のついた耳にまで撒かれた微細な魚子は整然として美しい。量感のある高彫の馬は、大きな目が印象的。柳川派の特徴を示す豊かな鬣と引き締まった力強い体躯をしている。柳川派の祖である直政は、横谷宗珉の直門。横谷式の赤銅魚子地高彫を得意とした。続く直光、直春、直連ら本家の頭領をはじめ門人達も代々その技を受け継いで栄えた。

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220,000

左右松透二重唐草文図鐔 無銘 神吉

左右松透二重唐草文図鐔 無銘 神吉

kamiyoshi


 お多福木瓜形に造り込んだ鉄地は、切羽台辺りを厚手に耳際を薄く仕立てた碁石形風で安定感があり、地面には鍛えた鎚の痕跡に加えて焼手による微妙な凹凸と流れるような肌合いが窺いとれる。装飾は肥後金工に特徴的な金線による鮮やかな二重唐草。色合い黒々とした鉄地に金の細線が映え、左右の大透とも絶妙の調和を成し、縄目鑢の施された漆黒の覆輪も上品である。江戸後期の肥後神吉(かみよし)派の特質が鮮明に示された出来となっている。

特別保存

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木瓜透鍔(鐔) 無銘 金山

木瓜透鍔(鐔) 無銘 金山

Kanayama

 小振りで引き締まった丸形に木瓜、十字、雁金を組み合わせた簡潔な透。叩き締められた強靭な地鉄には所々小粒の鉄骨が黒々と煌めく。茎穴の周囲を深く穿つ鏨跡は、衝撃を吸収するための実用上の工夫である。優し気な風情の曲線の中に実戦の厳しさを秘めた室町時代の作である。

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180,000

唐松繋図鍔(鐔) 銘 武州住吉正

唐松繋図鍔(鐔) 銘 武州住吉正

Yoshimasa

 慶事の特別な外装のために作られたのであろうか。青味を帯び、ずしりと重い上質の赤銅地の外周に菊花のような唐松文様を十三個繋ぎ置いた、目を引く意匠の鐔である。
 平地は丁寧な石目地仕上げ。唐松は、新芽と葉を真上から見て放射状にとらえ、中心を低くし、外側に向かって高さと厚みが増していく。中心は三星様の金色絵露象嵌が輝く。
 十三という数に何か意味があったのだろうか。縁日が十三日の虚空蔵菩薩(広大な宇宙のような無限の知恵と慈悲を持った菩薩)と何か関係があるのか。十三月が正月の異名であるとか、数え年十三歳の十三参り。十三を「とみ(富)」と読ませて縁起を担ぐなど。数にまつわるエピソードにも興味は尽きない。
鉄鐔の多い武州鐔にあって、上質の赤銅を厚く贅沢に使った本作はやはり特別の需に応えた作なのであろう。銘鑑に「松葉文透の鐔がある」という「透」は誤りで、本作のことを指していると思われる。

特別保存

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児島高徳図鐔  無銘 加賀後藤

児島高徳図鐔  無銘 加賀後藤

Kaga Goto

 元弘の変に敗れて隠岐に流されることとなった後醍醐天皇を救出すべく、闇に紛れて天皇行在所に忍び込んだ児島高徳だが、護りが固いため、桜の幹に「天莫空勾践(てんこうせんをむなしゅうすることなかれ) 時非無范蠡(ときにはんれいなきにしもあらず)」の詩を残して去った。天皇はこの文字を目にして勇気づけられ再起を図ったという。
 赤銅魚子地を闇夜に見立て、満開の桜を前に筆を手にする高徳の姿を極肉高に彫り出し、金銀の色絵を濃密に施し、高徳の厳しい表情をも精密に再現している。加賀前田家仕え、交代で金沢に居住した後藤覚乗や従兄弟の顕乗等は、加賀後藤と呼ばれている。

特別保存

600,000

鳩に鏃図鍔(鐔) 銘 後藤光久(花押)

鳩に鏃図鍔(鐔) 銘 後藤光久(花押)

Mitsuhisa

 切込みの浅い木瓜形を打ち返し耳とした一乗派が得意とする造り込み。陶板のように光沢のある鉄地には鳩と鏃の高彫象嵌。空には棚引く雲が金と赤銅の直線で簡潔に表わされている。写実的な鳩と鏃との異なる表現方法が興味深い。鳩は八幡宮を、弓矢は八幡太郎義家、あるいは武士そのものを連想させるが、本作は弓矢ではなく散らばった鏃である。一乗派には朽ちた木材や古瓦を散らし置いた図の鐔がある。光久も得意とした画題で、動乱の時代の影響か、無常観や寂寥感、郷愁を誘う。制作年はわからないが、本作もやはり世情を反映して、一つの時代の終わりを暗示しているのではないか。そう考えると大和絵風の雲にも何か含みがあるようにも思われる。光久は後藤一乗の兄是乗(光凞)の子で治左衛門家の六代目を襲った。一乗に似た作風の上手である。

特別保存

230,000

結綿透鐔 銘 尾州山吉兵〔桜花刻印〕

結綿透鐔 銘 尾州山吉兵〔桜花刻印〕

Yamakichibei

 円弧の毛彫りに点刻、槌目を施した地造りは陰影に富み、信家の影響を色濃く感じさせる。左右対称の陰透は、耳長兎を連想させるが、真綿を紐で束ねた結綿(ゆいわた)を意匠化したもの。慶事の引き出物や神前への供物として使われた。本作は、銘に桜花の刻印を打つことから「桜山吉」とも呼称される三代目山吉兵の鐔。江戸時代中期を代表する尾張の鐔工として戸田彦左衛門、福井次左衛門とともに「元禄三作(または「寛文三作」)の一人として賞美されている。
特別保存刀装具鑑定書(耳長兎図鐔)

特別保存

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鹿角竹虎図鐔 銘 平安城吉久

鹿角竹虎図鐔 銘 平安城吉久

Yoshihisa

 鹿角に蜂で俸禄。鹿角に蟻は禄有り。では鹿角に竹虎は何を意味するのであろう?
 大振りで鍛えの良い鉄地は耳に向かってやや肉を落とした竪丸形。その耳に切り取られた鹿角を廻らし、それよりもはるかに小さな虎を真鍮象嵌している。角には毛彫りと真鍮の線象嵌が施され、切り口は写実的。判じ絵であろうか、何とも不思議な図である。鹿の角から連想するものを書き連ねていてはたと気がついた。敵の侵入を防ぐために鹿角のように枝の先端を尖らせて外側に向けた障害物を逆茂木という。その別名は鹿砦(ろくさい)、または逆虎落(さかもがり)。これは武運長久の願いが込められたものではないだろうか。虎があまりに小さく可愛らしいのが何とも味わい深く面白い。吉久は平安城式象嵌を得意とした江戸時代初期の鐔工。

特別保存

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韃靼人図鐔  銘 保壽(花押)

韃靼人図鐔  銘 保壽(花押)

Yasutoshi

 未知の世界に棲む人々への興味は古くから強く、伝承に空想が加えられ、時には手長足長のような人物像まで創造されている。韃靼人(だったんじん)は中国大陸北部で狩猟生活をしていた民族。この鐔では、アフリカ系の印象を受ける姿格好とされているが、虎を従えているところには北方民族らしさも窺える。鶏頭太刀を備えているのは興味深い構成。鉄地を肉高く彫り出し、金銀朧銀素銅の象嵌を加え、写実味を高めている。保寿(やすとし)は水戸の額川派の金工。 

特別保存

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鉄線透図鍔 銘 長州萩住岡田宣治

鉄線透図鍔 銘 長州萩住岡田宣治

Nobuharu

 岡田宣治(のぶはる)は銘鑑に出ていない金工の一人。岡田家は長州鐔工界の名流であり、多くの門人を抱えてていたことであろう、そのような一人と考えて良い。

正阿弥流の肉彫地透に金布目象嵌を施した手法は先の友恒に通じて古風な面を漂わせつつも、洗練味があり、技量の高さを窺わせる。鉄線花は江戸中期以降の正確で精巧な彫刻、蔓の伸びる様子に動きがあり爽やか。

保存

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竹林の賢人図鍔(鐔) 銘 百壽軒芳信花押

竹林の賢人図鍔(鐔) 銘 百壽軒芳信花押

Yoshinobu

 薩摩出身の百壽軒芳信は中国古典を題に採った華麗な高彫色絵を得意とする。本作も竹林を背景に穏やかにほほ笑む二人の文人が描かれている。微細な赤銅魚子地と磨地の対比が際立ち、金銀素銅の象嵌色絵が華やかに彩る。細部に独特の表現を見せる芳信。高台の地面は深い毛彫に点刻を加えて柔らかな質感を出し、異なる金属の色絵と点刻でゆったりと重なった衣を表した。竹は撓っても折れず、雪の中でも青々と清らか。君子を象徴する植物である。 

特別保存

450,000

地紙散図鐔  銘 義昌

地紙散図鐔  銘 義昌

Yoshimasa

 義(よし)昌(まさ)は(注)筑前の金工で、作刀も手掛けた巧者。金工作品では美濃彫風の秋草図鐔 (銀座長州屋旧蔵)などを遺している。

この鐔は素銅の寂びた風合いを古画風に活かした作で、八角の造形と耳打返風に耳に抑揚をつけているのも味わい深い。様々な場面を捉えた地紙を散らした図はいかにも日本的で洒落た風情がある。

各々の文様は鋤彫に片切彫、毛彫、赤銅と銀の平象嵌、金の色絵と多彩な技法を駆使したもので、義昌の高技量が窺える作となっている。 
保存刀装具鑑定書


注…筑前刀工信國義昌には初、二代あり、この鐔は天保頃の二代の作であろう。

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200,000

蕪に蝶図鍔(鐔) 無銘 江戸肥後

蕪に蝶図鍔(鐔) 無銘 江戸肥後

Edo higo

 蕪と蝶は古くから陶磁器や着物の文様として目にする画題である。不思議な取り合わせだが、古語で「頭」のことを「かぶ」と発音したことから蕪は出世の象徴。蝶は中国語でhudie。発音の一部dieが老年を意味する耋dieと音が通じることから長寿の象徴とされたという。
大振りの撫角形は鍛え良く、ゆったりとした趣。蕪は金の布目に銀の布目を厚く重ねた凝った仕上げ。手に持って角度を変えると銀の間からきらきらと金が覗く。踊るような葉は、葉脈に細かく金布目象嵌を施したものと葉先にぼかすように異なる色調の金で布目象嵌を入れたものの二種で表と裏、陰と陽を表す。打ち込まれた鏨が地紋のようにも見え、そこに薄く鋤き出された蝶が舞う。繊細な文様は三種の金による布目象嵌。江戸肥後とは、仙台出身の熊谷義之が江戸四谷に出て肥後細川家の抱え工となったことからついた熊谷一派の呼称。金銀の布目象嵌を多用した華やかな作風で人気を博した。四谷肥後とも呼ばれた。

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160,000

波車透図鐔 無銘 刀匠

波車透図鐔 無銘 刀匠

Tosho

 川を流れ下る水辺に車が配された風雅な景色を洒落た印象の文様に表現し、陰影として透かした鐔。武骨な風合いが専らの刀匠鐔(とうしょうつば)にあって、桃山期の風情を漂わせる奇抜さも大きな魅力となっている。

色合い黒々とした頑強な風合いの鉄地を、耳際に比較して切羽台の辺りをわずかに肉厚に造りんで刀匠鐔の特長を鮮明にし、表面には鎚の痕跡を残しており、近世の作とは思えぬ古風な味わい。車の輪郭を表わす、ことのほか細い糸透かしの線も魅力の一つ。

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120,000

若松紋散図鐔  銘 東雲斎渡邊壽光作

若松紋散図鐔  銘 東雲斎渡邊壽光作

Toshimistu(Toryusai school)

 渡邊壽光(としみつ)は江戸後期に隆盛した東龍斎清壽の門人。木賊(とくさ)を耳に廻らした鐔、新趣の菊花尽し鐔、雪花文鐔、匂うような蘭の花を散らした鐔等(注)、写実味のある文様表現を得意とした名工。本作は、若松を組み合わせた繊細な線描写が美しい家紋散しの図。極上質の赤銅地はあらゆる光を吸収してしまうかのように色合い黒々として、金による家紋とは陰陽の対極にある存在。大粒に蒔かれた魚子は一糸乱れず整然とし、高彫された家紋はふっくらと丸みがあって上品、金の色絵が鮮やかに映えている。 
特別保存刀装具鑑定書
五十万円(消費税込)

注…いずれも『銀座情報』掲載品。

特別保存

500,000

瓢箪透鍔(鐔) 無銘 薩摩

瓢箪透鍔(鐔) 無銘 薩摩

Satsuma

 刀豆(なたまめ)図透鐔や竹虎図透鐔でよく知られる薩摩金工小田派の作には本作同様の長い瓢箪を輪にした瓢透鐔がある。簡潔で力強い造形、周囲を浅く鋤いて鋤き出された葉には葉脈がくっきりと彫り出されている。程よく艶のある地鉄は図像の際で肉を落とし、引き締まった中にも丸みを帯び、柔らかな光を放つ。触れればひんやりとしてすべすべと滑らか。質実剛健の気風の中に潜む鋼が生み出す美を感じたい。

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280,000

獅噛雨龍唐草透鍔(鐔) 無銘 南蛮

獅噛雨龍唐草透鍔(鐔) 無銘 南蛮

Nanban

 上下に獅噛を、立体的に透かし彫られた唐草に絡まるように左右に二対の阿吽の龍を配した濃密な作。耳に向かって肉を落とし、西洋の剣にも装着可能な茎穴を持つ。一口に「南蛮」といっても作風は様々。本作は、形状、画題、彫法のすべてに異国情緒が感じられ、造作も丁寧で細やかである。

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100,000

乗牛読書図鍔(鐔) 銘 米澤住重斯

乗牛読書図鍔(鐔) 銘 米澤住重斯

Shigenori

 牛の背に後ろ向きで座り読書する人物は、中国の隋末に割拠した群雄の一人、李密(582年─619年)。官職を辞し、史記や漢書を学んでいた時期の姿である。大振りの竪丸形は空間を贅沢に使い、ゆったりとした趣。うっすら鋤き出された雲が流れ、重なり合った唐松の高彫には金象嵌の松毬が輝く。なだらかに柔らかく盛り上がった李密と牛の高彫。牛の背にはうっすらと背骨が浮かび、読書に熱中する主人を気遣うかのように見上げている。
裏は寂びた余韻を残す楼閣山水図。会津住重斯、または米澤住重斯と刻銘した菊池重斯には、薪を背負って読書する朱買臣図鐔(銀座長州屋蔵)という作がある。「ながら読書」は学習意欲が庶民層にまで浸透した江戸時代後期の世相の表れかもしれない。

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170,000

天地洲浜透図鐔  銘 法安

天地洲浜透図鐔  銘 法安

Houan

 戦国時代の尾張国清洲の武具鍛冶であった法安(ほうあん)は、古風で力強い鐔を製作して甲斐の浅野家に抱えられ、後にその移封に伴って紀伊和歌山に移住している。鍛え強い地鉄に独特の表情を生み出させた「うわばみ肌」の技術に優れており、その作品は数奇者垂涎の的となっている。この鐔が好例。鉄地を大振りの木瓜形に造り込み、叩き締めた鎚の痕跡を残した上に、焼手(やきて)腐(くさ)らかしにより地文を加え、裏は素朴な鑢地仕上げ。耳をわずかに打ち返し、天地に簡潔な透かしを施している。

特別保存

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桐樹透鍔(鐔) 無銘 勘四郎

桐樹透鍔(鐔) 無銘 勘四郎

Kanshiro

 合わせ鍛えの跡が見られる大振りで厚手の変り形。黒味の強い地鉄が描く桐樹は屈曲し、花房は左右に揺れ、変化に富んでいる。葉脈や花房には毛彫が施され、笄櫃の内側には鏨の跡が顕著。又七の意匠を元に独創を加味した勘四郎の、松や梅、桐の変り形地透は、後に赤坂や土佐明珍にも受け継がれていった優れた意匠である。

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茶筅・茗荷・菊花・雁金繋透鍔(鐔) 無銘 赤坂

茶筅・茗荷・菊花・雁金繋透鍔(鐔) 無銘 赤坂

Akasaka

 深い色合いの鍛え良い鉄地は大振りで堂々とした菊花形。茶筅、茗荷、菊の花弁を雁金で繋いだ伝統的な赤坂鐔の意匠であるが、どことなくモダンな印象を受ける。それぞれの文様の大きさと配置の妙か。互いに交差するうっすらと肉を付けた菊の花弁が大きな存在感を放つ。

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135,000

芦雁図鐔  銘 浩然居光中(花押) 明治二巳夏應石澤影壽君需

芦雁図鐔  銘 浩然居光中(花押) 明治二巳夏應石澤影壽君需

Mitsunaka

 嚮山光中は鷲田慎吉と称し、多彩な色金を組み合わせた精巧で緻密な平象嵌を得意とした名工。この鐔では、鉄地を用いて晩秋の水辺の風情とし、抑揚変化のある地面を微細な石目地に仕上げて霧の起ち込めた中に主題が浮かび上がるように表現している。金朧銀の平象嵌と繊細な毛彫による芦は水に揺れるように、雛鳥を目掛けて舞い降りる雁もまた繊細な毛彫平象嵌で羽毛までも再現。裏面は芦のみで、穂を金と銀の平象嵌で描き分けているのも味わい深い。 

特別保存

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松樹騎馬菊水図鍔(鐔) 銘 法安

松樹騎馬菊水図鍔(鐔) 銘 法安

Hoan

 大振りで光沢のある鍛えの良い鉄地。自然光で見るとやや赤みを帯び、所々黒味の強い錆色を呈する。薄手の造りだが、耳には数条の合わせ鍛えの跡を見せる。腐らかし(*)の技法により独特の雅味のある薄肉彫りを得意とした法安。絹糸よりも細い線は、溶けて消え入りそうでありながら確かに存在し、時に激しく渦を巻き飛沫を上げる。関連性があるのかないのか、画面に散りばめられた紋様は、菊水、菊の葉、海老(髭が異様に長い)、松、騎馬人物である。菊、海老、松は不老不死、延命長寿の祈念であろう。疾駆する馬と手に長い棒状のものを持った人物は何を表しているのか。そもそも全てに意味を見出そうとする姿勢にも問題があるのかもしれない。光の当たり方で鮮明にも見える薄肉彫りは、陽炎越しに景色を見ているような不思議な感覚が心地良い。法安は山吉兵とほぼ同時代に活躍し、共に尾張における在銘鐔の先駆けとなった名工である。
(*)腐らかし 鉄鐔における彫刻技法のひとつ。文様のところに耐酸性の塗料を塗っておき、その他の部分を腐食させ、文様を浮き上がらせたもの。焼手腐らかし、腐食彫りともいう。

特別保存

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七福神図鍔(鐔) 銘 長州萩之住友房作

七福神図鍔(鐔) 銘 長州萩之住友房作

Tomofusa

 七福神信仰は、室町時代後期、禅宗の隆盛とともに「竹林の七賢人」に倣って成立したという。それ以前は大黒天と恵比寿の二神が福神として盛んに祀られた。装剣小道具においても古後藤の目貫や小柄、笄にこの二神が見られ、大黒天と恵比寿が相撲をとる「福神相撲図」という面白い画題もある。延命長寿、商売繁盛という現生利益を祈念する七福神信仰は、その後広く庶民に浸透していった。江戸後期には新春の散策を兼ねた七福神巡りなども盛んにおこなわれるようになる。長州鐔の美点である鍛え良く黒味の強い鉄地を浅い打ち返しの丸形に仕立て、琵琶をかき鳴らす弁財天を囲むように毘沙門天、布袋、寿老人、大黒天がいる。寿老人は楽しげに踊り、空には鶴が舞う。竹と松を背後に福禄寿が盃を持ち、恵比寿は亀を呼び寄せる。何ともおめでたい図を鋤出高彫に象嵌色絵で彫り描いた、江戸後期の長州金工友房の作である。

特別保存

180,000

牡丹散図鐔 銘 木国鎮斎〔金印〕

牡丹散図鐔 銘 木国鎮斎〔金印〕

Chinsai

 大振りの隅入木瓜形は浅い打ち返し耳でゆったりとした趣。鍛え良く艶のある鉄地は陶板を思わせる質感。深く浅く全面に施された槌目の陰影、刻印風に深く彫り込んだ牡丹の花弁と葉は、少し遠ざけて眺めると霧の中に浮かぶ牡丹の花園といった風情。まさに仙境、夢幻の光景である。鎮斎は、紀州藩の抱え工上田正喜と同人。

特別保存

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波に燕図鐔 銘 隺乗斎寿宝美重(花押)

波に燕図鐔 銘 隺乗斎寿宝美重(花押)

Yoshishige

 寿宝美重は石黒政美の門人。寡作ながら、このような優品を遺していることから頗る技量の高い金工であったことが判る。画題は海を渡って飛来する燕。荒波に襲われたこともあろう、その自然の摂理を写実表現している。漆黒の赤銅地は澄んで清らか。その魚子地は綺麗に揃って無限に広がる大宇宙をも暗示。寄せ来る波の崩れ落ちる様子、陽を受けて輝く波飛沫は金の点象嵌で鮮やか。姿態を異にする五羽の燕はいずれも躍動感に満ち、互いに呼応する目線、あたかも波と戯れているかのような姿も正確だけでなく愛らしい。

特別保存

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渦文鍔(鐔) 無銘 古金工

渦文鍔(鐔) 無銘 古金工

Ko-kinko

 数百年の時が降り積もった山銅地。大振りでほぼ真丸形の鐔は耳に向かって肉を落とし、耳際の厚さは僅かに1.9mm。かつての所持者達から余程愛好されたのであろう。始めは太刀の拵用として作られ、後に打刀拵の鐔となった。小柄笄櫃の形も古風である。そしてなんといっても文様が興味深い。同心円状に連続して展開するS字状の渦文は大きな五重の波紋となる。渦文は地球上のあらゆるところに存在する最も古い文様。日本では縄文土器にも見られる。渦はシンプルかつ的確に水の流れといった生命の根源を表し、転じて子孫繁栄を意味する吉祥文となる。ラヴェルのボレロのように、繰り返されるシンプルな文様は抗しがたい魅力を放つ。

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