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2023年1月14日 7:38:06

Imazu
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第七回 ざんぐり肌の凄み

(関連リンク)

平造脇差 銘 國廣(大業物)

【磨り上げ】と【区送り】


 現在は磨り上げられて刃長は二尺一寸強ですが、元来は二尺三寸強。元幅広く先幅も広く、鎬筋を常よりも高く仕立てて、頑強に作り込んだ作品です。

刀の寸法を短く調整することを「磨り上げ:すりあげ」と言います。茎尻(なかごじり:手に持つ部分の下部)はそのままにして、刀身を短くするのは「区送り:まちおくり」と呼んでいます。

有名工の作であっても、武士は自らが最も扱い易い寸法に刀を直して、戦場に赴きました。もっとも有名なのは、義元左文字とよばれる織田信長が桶狭間の合戦で今川義元より分捕った刀でしょう。

信長は長かった左文字を自らの体格に合わせて磨り上げ、金象嵌を入れて佩刀としたことは良く知られていますね。

天使顔
天使顔

【所持者の実像に迫る】

この國廣の刀には、腰元に「久伊豆大明神」と「八幡大菩薩」の神号が陰刻されています。刀身彫刻には所持者の信仰する神仏像や神仏を表す梵字(ぼんじ)などを施刻した例が多くあります。

本作の場合は、久伊豆神社(武蔵国から下野国に分布)と刀身に彫り入れられていることから、久伊豆神社を信仰するこの近在の武将の所持刀であったことが想像されます。

天使顔
天使顔

【ざんぐり肌】とは?


この作品の地鉄は、均一に詰んだ小板目肌に板目肌が縮緬のように細かく揺れて入り組んでいる様子が見て取れます。繊細な地景を伴っている点も大きな特徴ですね。

鍛え肌が大きめでふっくらとした風合いをもつ地鉄は京の国広に特徴的な地鉄の様相です。このような國廣の肌を「ざんぐり」と表現します。国広の地鉄を非常に良く言い表した言葉と思います。

ちなみに、「ざんぐり」は京言葉で、柔らかいとかふっくらしたという意味に使われ、時に大模様とかおおまかで風雅な様子を表す言葉として使われます。


天使顔
天使顔

【刃中に現れた鍛え肌】

刃中をよく観察しますと、地鉄同様に刃中にも折り返し鍛錬によって生じた鉄の層が刃先まで連続して入っていることに気が付きます。この刃中にまで入り込んだ折り返し鍛錬による鉄の積層構造には、微妙な凹凸が生じています。刃先に生じたこの凹凸により、刀の切れ味が増すと考えられています。

天使顔
天使顔

【國廣の凄み】

均一に詰んだ縮緬のように美しく、しかも地沸が働いた地鉄は、美しさと切れ味の良さ、そして何より凄みがあり迫力が感じられます。これが、新刀の横綱と賞揚される國廣が各地を巡って完成させた地鉄です。

刃文は浅い湾れに互の目を交えた構成です。
次回は、この地鉄と影響しあう刃中の働きを紹介しましょう。

天使顔
天使顔

天使顔
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日本刀専門店 銀座長州屋

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