青味を帯びた上質の赤銅地。全体の姿は均整がとれ、金蕨手は引き締まって格調高い。画面全体に古風な波頭を立てて寄せては返す高彫の金波、銀波。ひと際紋高く、彫り際を引き絞った立体的な恵比寿が身を乗り出すようにして竿を投じた糸の先には大きな魚がかかっている。古くは海神、漁業の神であった恵比寿は後に市場の神、商売繁盛の福の神としての性格を持つようになった。本作の恵比寿も、福々しい笑顔をしている。いかにも福が舞い込んできそうな縁起の良い画題である。