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海浜風景図鐔

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銘 乙未春日 園部芳英花押

Seaside scenery motif tsuba

Signed Kinoto-hitsuji Shunjitsu Sonobe Yoshihide (Kao)

No.

609

海浜風景図鐔 銘 乙未春日 園部芳英花押

特別保存

-

円(税込)

天保六年(1835年)春
武蔵国江戸下谷
赤銅魚子地磨地変わり八角形高彫象嵌色絵
縦:73.3mm 横:69mm
切羽台厚さ:4.8mm 耳際厚さ:3.8mm
特製桐箱入
特別保存刀装具鑑定書

A.D.1835 spring
Edo, Musashi province
Shakudo
Height: 73.3mm Width: 69mm
Thickness at seppadai : 4.8mm
Thickness at mimi(rim): 3.8mm
Tokubetsuhozon

 潮の引いた砂地に露になった四爪の大きな鉄錨。赤銅魚子地になんと鉄高彫を象嵌しているのだ。一見後藤風を謹直に継承しているようで、芳英は形状や細部に独創とこだわりを見せる。得意の変り八角形は碁石のように耳に向かって肉を落とし、その耳には微細な魚子を撒き散らしている。魚子地は何か特殊な仕上げを施しているのかもしれない。青味を帯びた上質の赤銅磨地と魚子地を巧みに配した地造りに極めつけは鉄の象嵌である。帆柱が並ぶ波穏やかな船泊、よくある海辺の風景のようだが、彼方の島は伝説の蓬莱島(注)ではなかろうか。微細な点刻の底に金を施した光に包まれた島は松の木々に縁どられ、遠くの島影は素銅の消込象嵌。手前を飛ぶ鳥は高彫色絵、彼方の鳥は平象嵌と遠近に工夫がみられる。園部芳英は田中芳章門人の園部芳継を父に持ち、父同様に後藤流の格調高い精巧な彫法を得意としているが、鉄地の扱いにも長けていて優れた作を残している。本作は芳英のユニークな一面と技量の高さを余すところなく伝える優品である。
(注)古代中国の道教思想で、東の海上にあるとされた不老不死の仙人が住むという蓬莱島。これは筆者の主観で、芳英は遠くに霞んで見える富士山と海上の島を描いたのかもしれない。富士山は別名「不死山」ともいうが。
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