蝋色塗鞘に鉄の透かし鐔を掛けた、時代の雰囲気のある脇差拵。鉄色黒くねっとりとした質感を呈する鐔は金山風に引き締まった作。天上の月を見上げる布袋の姿を彫り出した縁も金色絵を施さない渋い出来。漆で黒く染めた鮫皮に、同様に真っ黒な赤銅地容彫仕立ての市女笠図目貫を黒糸で巻きしめている。黒地に映える要素とされているのは、鞘の裏側に備えている小柄で、金の魚子地に銀地高彫据文仕立ての雨龍図。