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脇差 銘 津田越前守助廣 延宝九年二月日
短刀 銘 備前國長船住長光造 暦應元年十二月

2025年7月某日―

一人の男性が実家に伝わる大小一腰をご売却にご来店されました。
大小の長い方は脇差で延宝年紀の越前守助廣、そして短刀は長光。外装も中々のものです。

これだけであれば、いつもの、言ってしまえば「ごくありふれた」お買い取の一連の流れとして、そこで終わっていたはずでした。

所持者の方がお刀と一緒にお持ちになられた資料の数々、これこそが実は重要な、意義を持つものだったのです。

慶応二年 第二次長州征伐
今を遡ることちょうど160年前。倒幕の最先鋒の一角だった長州藩を武力で制圧する目的で、徳川幕府は連合軍をかの地へと派遣しました。
戦地となったのは、四ケ所、小倉口、石州口、大島口、そして芸州口。
後にこの四つの戦地から「四境戦争」とも呼ばれるこの一連の戦いにおいて、幕府が決戦の地とみなし、精鋭を配したのが安芸国と周防国の国境、芸州口でした。
国境を流れる小瀬川の芸州側大竹村に布陣する幕府軍彦根藩。対する長州軍は周防国和木村に民兵を中心とした戦力で迎え討ちます。
そして運命の6月14日。
朝霧立ち込める小瀬川を停戦の勅書を掲げて渡って来た彦根藩の使い番、竹原七郎平以下3名に向けて長州軍の最新式のライフル銃が火を噴きます。
川の中に斃れる彦根軍の兵士たち。そしてそれを合図に戦いの火蓋は切られたのでした。

この時、発砲の合図をした人物、民兵組織戢翼団の団長品川清兵衛。
開戦の銃撃を命じた彼こそが、今回の所持者のご先祖様だったのです。


国境の小さな村で上がった幕府の終焉と新時代を告げる時の声。
発砲を命ずる周防国戢翼団団長品川清兵衛と、その銃弾に斃れた彦根藩士竹原七郎平。
邂逅する新時代と旧時代。

その歴史の証人として代々受け継がれて来た大小一腰の刀。
同郷長州藩の出身でもある社長の深海の考察を展開いたします。
お見逃しなく。

解説 深海信彦
アシスタント 今津
編集 今津 寺尾
撮影・音声 一木
監修 高橋 浄久
考証 小島つとむ

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