心の駒図鐔 銘 資次
Suketsugu
精良で緻密な地鉄の大振りな鐔。片切彫りで表された強い風の中、蜘蛛の巣に馬がかかって暴れもがいている不思議な図である。肉感豊かに躍動感あふれる馬と細くピンと張って緊張感に満ちた金色絵の蜘蛛の巣。大きくとった余白がこの不思議な図をより深く印象付ける。
自分を捨てた男を恨んで悪鬼となった女 の悲しくも恐ろしい物語、謡曲『鉄輪』。盗みに入った家の庭で蜘蛛の巣に搦めとられた男が得意の連歌で許される狂言『蜘盗人』。いずれも「蜘蛛の巣に荒れたる駒は繋ぐとも二道かくる人は頼まじ(たとえ蜘蛛の巣に荒れた駒を繋ぎとめることが出来たとしても浮気男の心をつなぎとめることは出来ない)」という古歌が使われている。また、『徒然草』には葵祭の行進でこの古歌に因んだ衣装が出てくる。人類の永遠の課題ではあるが、よほど馴染み深い歌だったのであろう。資次は江戸後期の肥後明珎派の鐔工。
特別保存
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春駒図鐔 銘 宗與(花押)
Soyo (the 2nd generation)
横谷宗与(二代)は初代宗与に学んで独立した宗寿の次男で元禄十三年の生まれ。兄に初代英精がおり、早くから金工の技術を身に付 け技量が高く、正徳五年、十六歳の時に師宗珉の養子に迎えられている。享保十八年に宗珉が没すると横谷宗家の四代目を継いでいる。宗珉の片腕として鏨使いに心血を注ぎ、その重責を担ったものであろう、横谷の作風を踏襲して師に紛れる作品を遺している。加納夏雄は「…鑚行きは宗珉に似て中々に名手なりと云うべし、而して稍温和なる趣ある方なり、而して其作品には宗珉と見誤れる物もあり、又純然たる宗與の作と鑑定せらるるものありて作柄一定せざる所あり、是鑑評家の一考を煩はすべき点ならん」と高く評価していると同時に、師とは異なる作風をも試みていたことを指摘している。春駒と題されているこの鐔の図は、古くは邪気を祓うために宮中紫宸殿において正月七日に行われた白馬節会を想定して作品化したもの。
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