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​ 日本刀専門店銀座長州屋がご紹介する鐔、目貫、縁頭、小柄、笄、揃金具などの刀装具を種類別にまとめた商品検索ページです。基本的に価額表記のないものは売約済、もしくは非売品です。ご要望のお品がございましたら、お気軽にお問合せ下さい。(価額税込)

Copy right Ginza Choshuya

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三聖吸酸図鍔(鐔) 銘 直丈

三聖吸酸図鍔(鐔) 銘 直丈

Naotake

 過剰と思えるほどの装飾だ。点景、背景、装束の文様が色味を変えた金象嵌で隙間を埋め尽くすようにちりばめられている。この作品の主題を装飾に埋もれさせて隠したがっているのではないかと思うほどだ。
 大振りの鉄地竪丸形の中央に薄肉彫りで酢の入った大甕を据え、それを囲むように釈迦(仏教)、孔子(儒教)、老子(道教)の三聖人が立っている。何やら楽しそうで、特に中央の釈迦は歯を見せて大笑いしている。「三聖吸酸(さんせいきゅうさん)」または「酢吸三教(すきゅうさんきょう)」と称されるこの図は、誰が舐めても酢は酸っぱいように、教義や宗教が違っても真理は一つであるということをわかりやすく表している。室町時代に中国から伝えられたこの図は禅画で好まれ、後に寺社建築の彫刻にも採られている。裏側は鋤き出された岩の間を清冽な水流が迸る。清らかな水の流れを遠近、高低で奥行きを出した金象嵌の草木が鮮やかに彩っている。
 武陽住と銘する直丈は、作品の類例は少ないが、本作の見事な象嵌技術や表情豊かな人物描写を見れば優れた金工であったことがよくわかる。

特別保存

280,000

雪輪に雪花文鍔(鐔) 銘 壽光(花押)

雪輪に雪花文鍔(鐔) 銘 壽光(花押)

Toshimitsu

 極々浅い打ち返し耳によって強調された、溶けかかった雪玉のような変り形。氷柱で覆われ、降り積もった雪の表面には薄肉彫りと高彫象嵌で美しい雪の結晶が描かれている。小柄櫃を縁取るのは雪輪文。江戸時代後期、古賀藩主土井利位(としつら)が雪の結晶を観察し、『雪花図説』にまとめ出版したところ、雪花文様(雪の結晶の文様)が大流行した。装剣小道具も大いにその影響を受け、一乗派や東龍斎派に雪花文を主題とした美しい作品があるが、本作からは凍てついた空気まで伝わってくる。渡辺壽光は東龍斎清壽の門人。風景から人物図まで師風をよく受け継いだ優れた作品を残した。

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結綿透鐔 銘 尾州山吉兵〔桜花刻印〕

結綿透鐔 銘 尾州山吉兵〔桜花刻印〕

Yamakichibei

 円弧の毛彫りに点刻、槌目を施した地造りは陰影に富み、信家の影響を色濃く感じさせる。左右対称の陰透は、耳長兎を連想させるが、真綿を紐で束ねた結綿(ゆいわた)を意匠化したもの。慶事の引き出物や神前への供物として使われた。本作は、銘に桜花の刻印を打つことから「桜山吉」とも呼称される三代目山吉兵の鐔。江戸時代中期を代表する尾張の鐔工として戸田彦左衛門、福井次左衛門とともに「元禄三作(または「寛文三作」)の一人として賞美されている。
特別保存刀装具鑑定書(耳長兎図鐔)

特別保存

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牡丹散図鐔 銘 木国鎮斎〔金印〕

牡丹散図鐔 銘 木国鎮斎〔金印〕

Chinsai

 大振りの隅入木瓜形は浅い打ち返し耳でゆったりとした趣。鍛え良く艶のある鉄地は陶板を思わせる質感。深く浅く全面に施された槌目の陰影、刻印風に深く彫り込んだ牡丹の花弁と葉は、少し遠ざけて眺めると霧の中に浮かぶ牡丹の花園といった風情。まさに仙境、夢幻の光景である。鎮斎は、紀州藩の抱え工上田正喜と同人。

特別保存

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波に燕図鐔 銘 隺乗斎寿宝美重(花押)

波に燕図鐔 銘 隺乗斎寿宝美重(花押)

Yoshishige

 寿宝美重は石黒政美の門人。寡作ながら、このような優品を遺していることから頗る技量の高い金工であったことが判る。画題は海を渡って飛来する燕。荒波に襲われたこともあろう、その自然の摂理を写実表現している。漆黒の赤銅地は澄んで清らか。その魚子地は綺麗に揃って無限に広がる大宇宙をも暗示。寄せ来る波の崩れ落ちる様子、陽を受けて輝く波飛沫は金の点象嵌で鮮やか。姿態を異にする五羽の燕はいずれも躍動感に満ち、互いに呼応する目線、あたかも波と戯れているかのような姿も正確だけでなく愛らしい。

特別保存

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竹林の賢人図鍔(鐔) 銘 百壽軒芳信花押

竹林の賢人図鍔(鐔) 銘 百壽軒芳信花押

Yoshinobu

 薩摩出身の百壽軒芳信は中国古典を題に採った華麗な高彫色絵を得意とする。本作も竹林を背景に穏やかにほほ笑む二人の文人が描かれている。微細な赤銅魚子地と磨地の対比が際立ち、金銀素銅の象嵌色絵が華やかに彩る。細部に独特の表現を見せる芳信。高台の地面は深い毛彫に点刻を加えて柔らかな質感を出し、異なる金属の色絵と点刻でゆったりと重なった衣を表した。竹は撓っても折れず、雪の中でも青々と清らか。君子を象徴する植物である。 

特別保存

450,000

菅公留守模様図鍔(鐔) 銘 肥前国住忠行作

菅公留守模様図鍔(鐔) 銘 肥前国住忠行作

Tadayuki

東風吹かば 思い起こせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな 『捨遺和歌集』
海ならず 湛える水の 底までに 清き心は 月ぞ照らさむ 『新古今和歌集』

 菅原道真が詠んだ歌二首を象徴する情景を表裏に描いた菅公留守模様図。鍛えの良い鉄地は錆色深く、滑らかな手触り。梅樹の背景に深く、浅く打ち込まれた槌目は霜を置いた土にも、降る雪にも見える。天に向かって伸びる細い枝にはふっくらとした高彫で可憐な梅花が咲き匂い、折れて節くれだった太い幹は高彫に荒々しい鏨運びで老木の肌を表している。裏面は、大宰府へ左遷の途上、備前国児島郡八浜で詠んだとされる「海ならず」の歌の景色。ただ一艘の船が行く先を彼方の月が煌々と照らしている。
 忠行は肥前刀工忠吉の末に連なり、嘉永三年三月日と年紀のある風景図鐔を遺している。

保存

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菊桐唐草文図鐔 無銘 古鏡師

菊桐唐草文図鐔 無銘 古鏡師

Ko-kagamishi

 鋳型を利用した金属装飾は、古墳出土の銅鏡に例があるように歴史が古く、その古調な風合いが好まれて装剣小道具にも採り入れられている。地面の厚さが二ミリに満たない極薄に仕立てられた素朴な山銅地のこの鐔は、鋳型特有の砂地状の肌合いが渋い色調を呈し、桐紋や菊花、唐草文などを綺麗に浮かび上がらせている。土手耳部分には瑞雲状の鋤き込みがあり、これも地面に連続して不思議な味わいを成している。

保存

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登龍門図鍔(鐔) 銘 松翠軒美章寫 玉川図

登龍門図鍔(鐔) 銘 松翠軒美章寫 玉川図

Yoshiaki

 鯉が滝を登り切れば龍になるという伝説を表した「登龍門図」は立身出世を祈念する好画題。(萩谷勝平にも同図がある。)大振りの鉄地木瓜形は耳に向かって肉を落とし、銀覆輪が品良く画面を際立たせる。激しく立ち上がる波は生き物のような流動性を見せる高彫。必死の形相で滝に挑む鯉。鱗は密実で、背鰭は繊細に翻る。丸太を重ねた橋は、甲鋤彫りを思わせる細かな鏨運びが見られ、雲は片切彫と毛彫の併用。広狭、深浅、強弱がはっきりとしたメリハリのある彫法で迫力ある場面を描いている。雲は低く垂れ込め、川面は波立ち、雨が激しく打ち付ける。この川を遡り、次第に狭く激しくなる流れに逆らい、ついには滝を登りきる。鯉は龍となって生まれ故郷の川に恵みの雨をもたらせたのかもしれない。水戸玉川派の美章には一柳友善との合作の龍虎図鐔や仙人図小柄がある。

特別保存

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飛燕図鐔�� 銘 天台山麓園部芳英(花押)

飛燕図鐔 銘 天台山麓園部芳英(花押)

Yoshihide

 園部芳英は芳継の子で文化三年の生まれ。精巧緻密な高彫表現を得意とした。この鐔は、春の暖かい風を切り裂いて飛翔する燕を彫り描くことで、どこまでも青く清らかに澄む空気を表現した鐔。涼やかに流れる小川と、そのほとりに咲く蒲公英、土筆、遠く広がって天に溶け込む大地も、総てが空気のありようを演出する素材。陽の光を大地に届けてくれるのが空気。円周状に打ち施した魚子地も燕や草原に生命感を与えている。赤銅の黒、銀の白、目玉の金、頬の素銅とわずかの色金ながら、写実的高彫描写された燕は細部まで精密。小川の流れは高彫で、切羽台のみ銀の平象嵌。総ての彫刻技法が優れて美しい。 

特別保存

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紋様散透鍔(鐔) 無銘 古甲冑師

紋様散透鍔(鐔) 無銘 古甲冑師

Ko-Kacchushi

 大振りで薄手、時代の上がる、古甲冑師と呼称される鐔。
叩き締められた鍛えの良い地鉄は指で弾くとカランと乾いた音がする。陰に透かされた紋様は、雲であろうかそれとも花びらであろうか。極限まで細く透かされた曲線にも力が漲る。陰影のある表情豊かな地鉄に現代美術の抽象表現のような透模様が実に面白い。全て曲線で構成された紋様だが、手強い印象を受けるのはさすがに実用の時代の古甲冑師鐔ならではである。

特別保存

250,000

左右大透枯れ木象嵌鍔(鐔)無銘 伝又七

左右大透枯れ木象嵌鍔(鐔)無銘 伝又七

Den-Matashichi

 林又七は言わずと知れた肥後金工林派の祖。作品は精巧緻密でありながら、堅苦しさは微塵もなく、気韻生動。本作は、十字木瓜形の鉄地を、切羽台を挟んで左右を大きく透かし、枯れ木象嵌を施したもの。鍛えの良い地鉄の、艶と深みのある錆色の中に槌目の躍動感が混在する様が面白い。左右の大透も十字木瓜の切込みの配分もきっちりと左右対称にはせず、ほんの少しずらしている。その加減が絶妙で、これを計算しているところが名人たる所以であろう。左右の大透は遠見の松であろうか。あるかなきかに面取りされた透の際は溶けてしまいそうな、なんとも柔らかな質感。ルーペを使わず、ぼんやり地鉄を眺めていると、幾筋もの消え入りそうな細い線状の鍛え地の流れが見える。これがなんとも楽しい。枯れ木象嵌は細かく不規則に屈曲し、枝分かれして大透の外側を廻る。これらの小さな現象の重なりが本来動くはずのない鉄の塊に命を吹き込んでいるのかもしれない。

特別保存

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千里眼-改 鐔、目貫、小柄、笄、縁頭、火縄銃他 商品検索&刀装具データーベース お探しの商品がある場合にご利用ください。

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花丸紋散図鐔 無銘 加賀金工

花丸紋散図鐔 無銘 加賀金工

Kaga-kinko

 植物の意匠は古くからあり、有職模様などのように衣服などに採られて雅な風情を漂わせものも多い。円形に意匠されたのは桃山時代以降であろうか、品位高くしかも妖艶な香りを漂わせることから女性の着物に採られることが多く、江戸時代には大いに流行した。加賀(かが)金工(きんこう)と極められたこの鐔は、漆黒の赤銅魚子地で澄明感のある背景とし、量感のある高彫で梅、桜、牡丹、水仙、菊、椿の葉と花を彫り出し、金銀の色絵を加えてそれぞれの特徴をも的確に描写している。金の覆輪、櫃穴覆輪も豪華さを高めている。

特別保存

500,000

梅花散大学形鐔 銘 甫矯花押

梅花散大学形鐔 銘 甫矯花押

Masatada

 大学形と称された安親の散梅図鐔。松平大学頭頼貞に召し抱えられ、その豪放な気性の影響を大いに受けたのであろう、雄渾にして格調高い、壮年期安親の代表作である。本作はその安親の散梅図を念頭において製作された堂々たる大学形の鐔。地鉄から造った鍛えの良い地はすべすべと滑らかな手触りで心地良い。そこに浮かび上がるように散らされた梅の花は、柔らかくふっくらとして優し気な様子。豪胆な造り込みの中で繊細さと可憐さが際立つ。一体どんな豪刀に装着されたのであろうか。これだけの大きさと重さがあるとなると鐔止めの孔も伊達ではないだろう。鉄地鋤出彫りを得意とした甫矯(まさただ)は橘窓子と号し、大沢因幡とも銘する。信州松本出身で江戸の伊藤家に学び京都でも修業した。

特別保存

250,000

木曽義仲願文図鍔(鐔) 無銘 古金工

木曽義仲願文図鍔(鐔) 無銘 古金工

Ko-kinko

 寿永二年(1183年)五月、義仲軍は、越中加賀国の国境砺波山にて圧倒的な兵力を誇る平維盛軍と対峙し、勝利する。世に言う「倶利伽羅峠の戦い」である。この戦を前にして義仲は戦勝祈願の願文を軍師の覚明に起草させ、埴生八幡神社に奉納した。本作は正にその場面を彫り描いている。漆黒の赤銅地に整然と並ぶのは古風な縦魚子。時代の上がる絵風鐔に共通する表裏図変わりの様式と相俟って一層古色を感じさせる。耳は覆輪ではなく地を鋤下げた鋤残耳である。扇を手にし、床几に腰掛け、長い太刀を佩いた義仲。鳥居の前で薙刀を置き、跪いて願文を開く武者。高彫は紋高く立体的で、展開する物語の間に配置された松や水辺は目にも鮮やかな金色絵。一方裏側は、主題を下方に置き、大きく空間を取っている。春の夜、三日月の下、波頭の立つ荒れた川を大木に乗って漕ぎ渡る人物がいる。良く日焼けした体は素銅で表され、黒色化した銀の月、楓と松、迫りくる波の金色に囲まれ常人とは思えない雰囲気を醸し出している。この図は長伯房図という。狩野元信の下絵を用いて後藤宗家四代光乗が製作した長伯房図笄、後藤宗家十二代光理の折紙が附された紋光乗 光理花押の費長坊・長伯房図小柄が有名で、ご存知の方も多いと思うが、珍しい上に謎の多い画題である。鶴に乗った人物が費長坊(費張、飛張ともいう)で、仙人列伝にも記載があり、江戸時代には見立絵にも描かれている。一方、長伯房は画題を説明する資料を今のところ発見できないでいる。どんな人物なのだろうか。そもそも人なのか。何故舟ではなく枝のついたままの木を漕いでいるのだろうか。それにしても、金家の作をはじめ、絵風の古い鐔は何故表裏図変わりのものが多いのだろう。これはあくまで仮説なのだが、表の画題とは異なる中国故事や山水風景を採り入れるのが、唐物が珍重された時代の約束事だったのではないか。表裏共に珍しい図であり、入念な作である。

特別保存

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流水梅花透鐔 無銘 古甲冑師

流水梅花透鐔 無銘 古甲冑師

Ko-kacchushi

 大振りで薄手、叩き締められた強靭な地鉄は、耳は勿論のこと平地にも粒状、塊状の鉄骨が顕著。無櫃の地は表地の方が僅かにこんもりと盛り上がり、時代の上がる甲冑師鐔や刀匠鐔の一特徴を示している。極限まで細く仕立てられた可憐な梅の花一輪と流水文の透は、甲冑面の顎に施された繊細な透模様を思わせる。荒々しい槌目が景色となり、高度な技術による極細の透が更に際立つ。鉄の様々な表情をお楽しみいただきたい。

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児島高徳図鐔  無銘 加賀後藤

児島高徳図鐔  無銘 加賀後藤

Kaga Goto

 元弘の変に敗れて隠岐に流されることとなった後醍醐天皇を救出すべく、闇に紛れて天皇行在所に忍び込んだ児島高徳だが、護りが固いため、桜の幹に「天莫空勾践(てんこうせんをむなしゅうすることなかれ) 時非無范蠡(ときにはんれいなきにしもあらず)」の詩を残して去った。天皇はこの文字を目にして勇気づけられ再起を図ったという。
 赤銅魚子地を闇夜に見立て、満開の桜を前に筆を手にする高徳の姿を極肉高に彫り出し、金銀の色絵を濃密に施し、高徳の厳しい表情をも精密に再現している。加賀前田家仕え、交代で金沢に居住した後藤覚乗や従兄弟の顕乗等は、加賀後藤と呼ばれている。

特別保存

600,000

鳩に鏃図鍔(鐔) 銘 後藤光久(花押)

鳩に鏃図鍔(鐔) 銘 後藤光久(花押)

Mitsuhisa

 切込みの浅い木瓜形を打ち返し耳とした一乗派が得意とする造り込み。陶板のように光沢のある鉄地には鳩と鏃の高彫象嵌。空には棚引く雲が金と赤銅の直線で簡潔に表わされている。写実的な鳩と鏃との異なる表現方法が興味深い。鳩は八幡宮を、弓矢は八幡太郎義家、あるいは武士そのものを連想させるが、本作は弓矢ではなく散らばった鏃である。一乗派には朽ちた木材や古瓦を散らし置いた図の鐔がある。光久も得意とした画題で、動乱の時代の影響か、無常観や寂寥感、郷愁を誘う。制作年はわからないが、本作もやはり世情を反映して、一つの時代の終わりを暗示しているのではないか。そう考えると大和絵風の雲にも何か含みがあるようにも思われる。光久は後藤一乗の兄是乗(光凞)の子で治左衛門家の六代目を襲った。一乗に似た作風の上手である。

特別保存

230,000

香炉・松皮菱紋透鍔(鐔) 無銘 金山

香炉・松皮菱紋透鍔(鐔) 無銘 金山

Kanayama

 掌に収まってしまう小さな鐔である。しかしこの中に時代の上がる金山鐔の魅力がギュッと詰まっている。滑らかな感触で、黒味を帯びた鍛えの良い地鉄には一際黒く粒状の鉄骨が現れている。引き締まった縦長四ツ木瓜形の耳は厚く、切羽台に向かってやや薄くなる中低の造り込み。入隅に猪目透を配した意匠は鎌倉期の太刀鐔の様式でもある。切羽台は刀への装着の際に赤銅で補完したもの。透の一部に割れや欠けが見られるが、数百年をかけて、この鐔が代々の所有者にいかに愛好されてきたかを如実に物語っている。金山鐔と称されるものの中で最も時代の上がるものであろう。

特別保存

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琴高仙人図鍔(鐔) 銘 正壽軒知久

琴高仙人図鍔(鐔) 銘 正壽軒知久

Tomohisa

 琴の名人琴高仙人は古代中国の仙人。ある日、弟子に龍の子を捕まえると約束する。約束の日、琴高は鯉の背に乗って水中から現れたという。滝を昇りきれば龍になるといわれている鯉は龍の子と言えなくもない。表側には激流に逆らい川を泳ぐ鯉とその背にまたがり巻物を広げる琴高仙人。見上げた視線の先は裏側に彫り描かれた滝である。琴高仙人が手にしている巻物には龍門の場所が記されていて、「さあ、お前はこれからあの滝を昇りきって龍になるのだ。」とでも言っているようだ。鯉の目線がやや後ろを向いていて、困惑顔に見えるのも面白い。
 柔らかな衣の質感、その中に確かに肉体が存在すると感じさせる肉置き。髪や髭、表情や指先まで丁寧で詳細な描写が見事である。赤銅高彫の鯉は、なだらかに抑揚をつけた肉付けに写実的な鱗や鰭、顔周りには有るか無きかの毛彫りを添えて生き生きと描かれている。正壽軒知久は、水戸藩抱え工の玉川吉長の門人。

特別保存

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鉄線透図鍔 銘 長州萩住岡田宣治

鉄線透図鍔 銘 長州萩住岡田宣治

Nobuharu

 岡田宣治(のぶはる)は銘鑑に出ていない金工の一人。岡田家は長州鐔工界の名流であり、多くの門人を抱えてていたことであろう、そのような一人と考えて良い。

正阿弥流の肉彫地透に金布目象嵌を施した手法は先の友恒に通じて古風な面を漂わせつつも、洗練味があり、技量の高さを窺わせる。鉄線花は江戸中期以降の正確で精巧な彫刻、蔓の伸びる様子に動きがあり爽やか。

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放馬図鐔 銘 加藤重光(花押)

放馬図鐔 銘 加藤重光(花押)

Shigemitsu

 加藤重光は、狩野探幽に学んで同門四天王に数えられた会津藩御用絵師加藤遠沢の孫。会津では正阿弥流の風景図が隆盛しており、重光もまた風情のある絵画風の鐔を遺している。この鐔は、野に放牧されている馬の様子を自然な視線で捉えた作。質の良い鉄地を高彫とし、冬枯の木は赤銅地高彫、馬の身体は朧銀地高彫に金色絵、下草も金で静けさに包まれた空間を創出している。裏面は野に流れる小川に雪が舞い落ちている様子であろうか。

特別保存

180,000

井伊家家紋散図鍔(鐔)銘 濱野直寛(花押)

井伊家家紋散図鍔(鐔)銘 濱野直寛(花押)

Naohiro

 井桁紋と橘紋といえば「井伊の赤備え(あかぞなえ)」で勇名を馳せた彦根藩井伊家の定紋と替紋(旗印)であろう。徳川家康に見いだされ、徳川四天王と呼ばれるほどの武将となった初代彦根藩主井伊直政。あまりに勇猛果敢だったので、時に家康に諫められたという逸話があるが、諸大名との政治交渉にも抜群の手腕を発揮し家康の片腕となって江戸幕府の設立に貢献した。
 端正な赤銅魚子地四ツ木瓜形の四隅に猪目小透を配し、耳は厚く金色絵をかけて石目地仕上げとしている。井桁紋は高彫と金平象嵌。平象嵌はその上に更に魚子が撒かれている。橘紋は紋高い高彫に厚く金色絵がかけられ、微細な魚子地に浮かび上がって輝く。
 濱野直寛は、出羽山形藩主秋元但馬守の抱工佐野直好の門人。佐野一門は家紋の高彫色絵も得意としている。

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野晒図鍔 無銘 甚吾

野晒図鍔 無銘 甚吾

Jingo

人は死ねば皆髑髏となる。その無常観を表現した作。志水甚(じん)吾(ご)は肥後金工を代表する名流。素朴な鉄地や真鍮地、素銅地を巧みに処理し、個性的な構成で主題の本質に迫った。この鐔は、深みのある色合いの素(す)銅(あか)地を肉厚に地造りし、地面を中低に仕立て、高彫と毛彫に金の露(つゆ)象嵌(ぞうがん)を加えて枯れた野の様子を、赤(しゃく)銅(どう)の高彫象嵌で草の陰に朽ち果てて忘れられた人骨を彫り表わしている。印象的なのは裏面の銀平(ひら)象嵌(ぞうがん)による三日月。誰にも気づかれることなく、また葬られるわけでもなく、ただ野に屍を晒しているだけ。それを知るのは月のみか…。
特別保存刀装具鑑定書(甚吾)

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菅原透図鐔 銘 忠時作

菅原透図鐔 銘 忠時作

Tadatoki (Akasaka)

 赤坂八代目忠時の、特徴豊かな造り込みになる鐔。菅原道真の太宰府左遷に取材した歌舞伎『菅原伝授手習鑑』を表現した鐔。登場人物梅王丸、松王丸、桜丸を、それぞれの植物に擬え文様表現している。良く鍛えられた細やかな鉄地を切羽台の厚い碁石形に造り込み、透かしの切り口を鋭く仕上げて陰影を明瞭にし、要所に繊細な毛彫を加えて美観を高めている。耳には赤坂鐔の特徴でもある合せ鍛えの層状の肌が鮮明に現れている。

特別保存

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南蛮船図鍔(鐔) 銘 永井弁己 宝十二年八彫

南蛮船図鍔(鐔) 銘 永井弁己 宝十二年八彫

Benki

 永井弁己とは誰であろうか。今のところ全く情報が無い。銘文の「宝十二年八彫」は、おそらく製作年のことであろう。宝暦十二年(1762年)、十八世紀半ばである。徐々にオランダとの貿易は衰退していったのだが、八代将軍吉宗がキリスト教関係以外の洋書の輸入を緩和したので、日本に学術洋書が輸入されることとなった。杉田玄白が『解体新書』を発行したのが安永3年(1774年)、本作の製作年から8年後のことである。この鐔は、表側と裏側で西洋と東洋、異なる世界を描いている。風を受けて帆をいっぱいに張り進む大きな船は新しい知識や文明を運ぶもの。対して静かな入り江と四阿は東洋の思想や理想とする世界を象徴している。興味深いのは波の表現である。手前の波を太く強い線で、奥に行くにしたがって細く浅い線となる。このような遠近の表現を刀装具ではあまり実見したことがない。小社蔵の庄内藩工横谷宗寿の手になる業平東下り図大小鐔くらいであろうか。大きく変わりゆく時代の前触れを感じさせる作品である。

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二つ銀杏紋散図鍔(鐔) 無銘 太刀師

二つ銀杏紋散図鍔(鐔) 無銘 太刀師

Tachishi

 手に持つと驚くほどずっしりと重い。横に張った安定感のある厚手の山銅地は、切羽台に無数の荒々しい鏨の跡が見てとれる。金色絵の魚子地から浮かび上がるのは雪輪のようにも花のようにも見えるが、銀杏の葉を二枚組み合わせたもの。神社の御神木や街路樹として親しまれている銀杏だが、文献に登場するのは十五世紀半ばに編纂された国語辞典『下学集』が今のところ最古である。紋章として成立したのも同時代くらいであろうか。(因みに徳川家康の父の廟所に剣銀杏紋が付けられていることから、銀杏紋は徳川家に縁があるという説がある。)山銅地高彫の銀杏紋は、上下左右に配したもののみを銀色絵としている。猪の目透の小縁と耳にも銀色絵を施し、金、銀、山銅の色合いが不思議な明るさで見事に調和している。古美濃の鐔などによくみられる小柄笄櫃の形状、太刀鐔としての表側の方が僅かにこんもりと盛り上がっている様や幅広の木瓜形も時代の上がる鐔の特徴を表している。

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大森彦七図鍔(鐔)無銘 浜野

大森彦七図鍔(鐔)無銘 浜野

Hamano

 大森彦七は伊予国の生まれ。南北朝の戦いで北朝方につき、湊川の戦いで楠木正成を敗死に追いやった。『太平記』には彼が正成の怨霊に悩まされたという逸話があり、謡曲、浄瑠璃、歌舞伎などに取り上げられている。本作もその一つ。湊川の戦いに勝利し恩賞を得た彦七がその祝いに猿楽を催す。会場へ向かう山道で若く美しい女に出会った彦七は、難路に悩んでいるのを見かねて背負って瀬を渡ろうとするが、美女は恐ろしい鬼に変じ、彦七に襲い掛かってくる。逞しい足を踏ん張って川面を見つめる彦七は背負っているのが実は鬼女だと気づいたのだろう。鬼の手は彦七の肩をがっちり掴み、長い爪が生えた足は太刀の内側に入っている。不穏な空気と緊張感が漲る空間である。浜野派が得意とする、図の輪郭線を片切彫とし、その内側を薄肉に鋤出す技法を駆使して抑揚のある変化に富んだ表現を完成させている。

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桜花散透図鐔 銘 武州住 赤坂忠好作

桜花散透図鐔 銘 武州住 赤坂忠好作

Tadayoshi (Akasaka)

 満開の桜花を陽に表現して鐔全面に濃密に散し配した、鮮やかな印象の鐔。鉄色黒く微細な石目地処理で渋い光沢があり、鉄地一色ながら温もりの感じられる風合い。切羽台に比較して耳際を薄手の碁石形に仕立て、花の重なりには毛彫を加え、花の中心の小穴はなんと一ミリに満たない微細な点状。いかなる技術を以て施したものであろうか。忠(ただ)好(よし)は赤坂を代表する忠重の子で、父に次ぐ高い技量を持つ鐔工。

特別保存

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籠目透鍔(鐔) 無銘 古正阿弥

籠目透鍔(鐔) 無銘 古正阿弥

Ko-Shoami

 竹籠の網目模様を意匠化した籠目文。正三角形を逆向きに重ねた六芒星は、陰と陽、相対するものの調和を意味し、邪気を祓うと信じられてきた。その六芒星の連続模様が籠目文である。古来より衣服や器物の文様として採り入れられてきた。この鐔は全面に細かな籠目模様が透かされ、しかも小柄・笄櫃は五芒星を暗示する五角形である。陰陽道では五芒星もまた魔除の呪符として用いられた。手に馴染む質感で深い錆色を呈した鍛えの良い地鉄は切込みの浅い木瓜形で、耳に向かってなだらかに肉を落とす。変わった形の櫃穴と共に時代の上がる鐔の様相を表し、何とも言えない魅力に溢れている。

特別保存

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林和靖図鐔 銘 弘親

林和靖図鐔 銘 弘親

Hirochika

 打越弘親は善太郎と称し弘壽の高弟。中国人物などを題材にした作品を遺して名高い。詩人林和靖(りんあせい)は西湖の畔に閑居して梅と鶴を愛して過ごしたという。この鐔は、朧銀地を微細な石目地に仕上げ、正確で精巧な図柄構成とし、細密な高彫表現で立体的描写だけでなく舞鶴と和靖の間に広がる広大な空間をも表現している。特に人物の顔は表情が豊かで、指先、目線、唇の動きまでも見事に再現している。金銀赤銅素銅の色金も過ぎることなく美しい。

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鉢の木透図鐔 銘 紀州住貞命

鉢の木透図鐔 銘 紀州住貞命

Sadanaga(Teimei)

 法安の流れを汲むと云われる紀州鐔工貞命(さだなが)の、武州赤坂初代忠正が得意とする斧に松皮菱を組み合わせた「鉢の木」図を再現した鐔。「いざ鎌倉」の謂いを遺した佐野源左衛門が主題の謡曲に取材したもので、原題の物語性に加えて迫力のある空間構成が魅力。質の良い地鉄は色黒く、一部に光沢の強い鉄骨様の異鉄が現れて緊張感のある景色となっている。斧の刃が、斜めに構成されていて刃を想わせるように工夫されている点も面白い。

特別保存

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源氏物語(夕顔)図鍔(鐔) 無銘 庄内

源氏物語(夕顔)図鍔(鐔) 無銘 庄内

Shonai

 珍久、そして安親の大成によって作風を大きく奈良派に転向した庄内金工。源氏車紋と夕顔、二匹の蝶の小透で源氏物語夕顔図を表している。物語の不穏な展開と悲劇を予感するかのように激しい槌目と漆仕上げによる地作りが印象に残る。夕顔は赤銅と金銀の象嵌色絵、極めて細い糸透による蝶の触覚には瞠目する。

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芦雁図鐔  銘 浩然居光中(花押) 明治二巳夏應石澤影壽君需

芦雁図鐔  銘 浩然居光中(花押) 明治二巳夏應石澤影壽君需

Mitsunaka

 嚮山光中は鷲田慎吉と称し、多彩な色金を組み合わせた精巧で緻密な平象嵌を得意とした名工。この鐔では、鉄地を用いて晩秋の水辺の風情とし、抑揚変化のある地面を微細な石目地に仕上げて霧の起ち込めた中に主題が浮かび上がるように表現している。金朧銀の平象嵌と繊細な毛彫による芦は水に揺れるように、雛鳥を目掛けて舞い降りる雁もまた繊細な毛彫平象嵌で羽毛までも再現。裏面は芦のみで、穂を金と銀の平象嵌で描き分けているのも味わい深い。 

特別保存

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松樹騎馬菊水図鍔(鐔) 銘 法安

松樹騎馬菊水図鍔(鐔) 銘 法安

Hoan

 大振りで光沢のある鍛えの良い鉄地。自然光で見るとやや赤みを帯び、所々黒味の強い錆色を呈する。薄手の造りだが、耳には数条の合わせ鍛えの跡を見せる。腐らかし(*)の技法により独特の雅味のある薄肉彫りを得意とした法安。絹糸よりも細い線は、溶けて消え入りそうでありながら確かに存在し、時に激しく渦を巻き飛沫を上げる。関連性があるのかないのか、画面に散りばめられた紋様は、菊水、菊の葉、海老(髭が異様に長い)、松、騎馬人物である。菊、海老、松は不老不死、延命長寿の祈念であろう。疾駆する馬と手に長い棒状のものを持った人物は何を表しているのか。そもそも全てに意味を見出そうとする姿勢にも問題があるのかもしれない。光の当たり方で鮮明にも見える薄肉彫りは、陽炎越しに景色を見ているような不思議な感覚が心地良い。法安は山吉兵とほぼ同時代に活躍し、共に尾張における在銘鐔の先駆けとなった名工である。
(*)腐らかし 鉄鐔における彫刻技法のひとつ。文様のところに耐酸性の塗料を塗っておき、その他の部分を腐食させ、文様を浮き上がらせたもの。焼手腐らかし、腐食彫りともいう。

特別保存

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鹿角竹虎図鐔 銘 平安城吉久

鹿角竹虎図鐔 銘 平安城吉久

Yoshihisa

 鹿角に蜂で俸禄。鹿角に蟻は禄有り。では鹿角に竹虎は何を意味するのであろう?
 大振りで鍛えの良い鉄地は耳に向かってやや肉を落とした竪丸形。その耳に切り取られた鹿角を廻らし、それよりもはるかに小さな虎を真鍮象嵌している。角には毛彫りと真鍮の線象嵌が施され、切り口は写実的。判じ絵であろうか、何とも不思議な図である。鹿の角から連想するものを書き連ねていてはたと気がついた。敵の侵入を防ぐために鹿角のように枝の先端を尖らせて外側に向けた障害物を逆茂木という。その別名は鹿砦(ろくさい)、または逆虎落(さかもがり)。これは武運長久の願いが込められたものではないだろうか。虎があまりに小さく可愛らしいのが何とも味わい深く面白い。吉久は平安城式象嵌を得意とした江戸時代初期の鐔工。

特別保存

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韃靼人図鐔  銘 保壽(花押)

韃靼人図鐔  銘 保壽(花押)

Yasutoshi

 未知の世界に棲む人々への興味は古くから強く、伝承に空想が加えられ、時には手長足長のような人物像まで創造されている。韃靼人(だったんじん)は中国大陸北部で狩猟生活をしていた民族。この鐔では、アフリカ系の印象を受ける姿格好とされているが、虎を従えているところには北方民族らしさも窺える。鶏頭太刀を備えているのは興味深い構成。鉄地を肉高く彫り出し、金銀朧銀素銅の象嵌を加え、写実味を高めている。保寿(やすとし)は水戸の額川派の金工。 

特別保存

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渦文鍔(鐔) 無銘 古金工

渦文鍔(鐔) 無銘 古金工

Ko-kinko

 数百年の時が降り積もった山銅地。大振りでほぼ真丸形の鐔は耳に向かって肉を落とし、耳際の厚さは僅かに1.9mm。かつての所持者達から余程愛好されたのであろう。始めは太刀の拵用として作られ、後に打刀拵の鐔となった。小柄笄櫃の形も古風である。そしてなんといっても文様が興味深い。同心円状に連続して展開するS字状の渦文は大きな五重の波紋となる。渦文は地球上のあらゆるところに存在する最も古い文様。日本では縄文土器にも見られる。渦はシンプルかつ的確に水の流れといった生命の根源を表し、転じて子孫繁栄を意味する吉祥文となる。ラヴェルのボレロのように、繰り返されるシンプルな文様は抗しがたい魅力を放つ。

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竹生島図鐔 銘 山城国伏見住金家

竹生島図鐔 銘 山城国伏見住金家

Kaneie

 金家は、禅に題を得た図柄や、達磨、李白など歴史的な人物を鐔に彫り描いたが、同じ鐔面に金家が生きた時代の京都周辺の風景を採り入れているものがある。主題も、歴史や伝説といった時の彼方のものばかりではなく、飛脚図や曳舟図のように、より身近な出来事への興味をも示していると思われ、同時代の装剣小道具の製作者の中においては歴史を研究する上でも興味深い作品を遺した識者で、特異な存在と言えるであろう。
 この鐔は、京にほど近い近江国琵琶湖が舞台とされた謡曲『竹生島(ちくぶじま)』を主題とした作。『竹生島』は室町時代初期の金春禅竹作と伝えられ、明るく軽快な内容が好まれて演じられたという。
 古甲冑師鐔のように鍛えの頗る良い鉄地は、叩き締めた鎚の痕跡が明瞭に残されて景色となっている。この鍛え肌も拳形とも呼ばれる独特の形状と共に金家の特質。さらに、打ち返された耳が抑揚変化し、鐔という画面を無限の空域へと連続させている。表は琵琶湖畔で左手網(さであみ)を肩に小鮎漁に向かう海女姿の弁財天。謡曲『竹生島』では老漁師と海女が主題とされているが、金家は実際に取材した海女一人を、遠く眺める山並みを背景として印象深く彫り描いている。足元は砂浜に寄せる波であろう、微かな毛彫表現。一方裏面は夜の湖面。謡曲『竹生島』よりイメージした、月に輝く湖面を跳躍する兎。いずれも鍛着部が判らないほどに精巧な共鉄象嵌(ともがねぞうがん)。僅かに銀象嵌を加えている。
金家が見たのは、そして彫り描いた月は、伝説と現実が交わる夢玄への入口に他ならない。

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三盛角紋透かし図鐔 無銘 古甲冑師

三盛角紋透かし図鐔 無銘 古甲冑師

Ko-kacchushi

 カランと乾いたような響音を呈する鍛え強い鉄地を平坦に仕立て、簡潔な透かしを施して装飾とした、戦国武将好みの鐔。薄手に仕立てられた鉄地の色合いが黒く、鍛えた鎚の痕跡によって渋い光沢があり、耳は打ち返しによって桶(おけ)底(そこ)に仕立てられて緊張感に満ちている。甲冑師(かっちゅうし)鐔は、耳を桶底状、あるいは環状(かんじょう)構造にすることによって堅牢さが高められている。この鐔は小柄笄の櫃穴もなく、質素でありながら力強さが魅力の一枚である。

特別保存刀装具鑑定書(古甲冑師) 

特別保存

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瓢朝顔図鐔 銘 信家

瓢朝顔図鐔 銘 信家

Nobuie

 桃山三名人の一人に数えられている信家(のぶいえ)は、永禄から天正年間の尾張清洲で活躍した信家以降複数人の存在が考察されているが、戦国時代という背景から活動の記録が極めて少ない。このように在銘作が遺されている割りに謎めいた存在である点も魅力の一つで、江戸時代から既に研究の対象とされている。作行は、切羽台に比較して耳際の厚い頑強な鉄地の仕立てで、文様の打ち込みや毛彫、筋彫などを組み合わせた簡潔ながら複雑な描法。図柄は葡萄や瓢箪、朝顔など蔓様の植物を唐草風に鐔全面に施したものが多く、また、鋤彫により御題目文字などを加えた作もある。これら毛彫鋤彫が、錆び色黒く光沢のある地鉄に現れた鉄骨(てっこつ)など素材そのものの働きと複合し、地相に動感を生み出しているところが見どころ。特に初期の作には室町時代の甲冑師鐔にも通じる素朴な美観が備わっており、時代の降った写し物にはない景色が愛鐔家垂涎の的となっている。
 この鐔が典型。銘は所謂放れ銘。古くから戦国時代の実用的な拵に合うと評価されているようにバランス良く、強い衝撃にも耐え得るよう耳際を厚くした構造も覇気に富んでいる。鍛えた鎚の痕跡を残す地面も、色合い黒くねっとりとした渋い光沢で一段と強味が感じられる。耳の所々に現れているさらに色の黒い鉄骨には山吉兵の鐔に見られる小さな炭籠りを想わせる働きも窺え、地の抑揚に能動的変化を与えている。図柄は夏の陽を受けて無限に蔓を延ばして行くかのような、永遠の生命を暗示する瓢箪と朝顔。この両者は信家を説明する上で外すことのできない図で、ここでも地肌に溶け込むような素朴な毛彫の組み合わせとされている。

特別保存

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雨龍文図鐔 無銘 西垣

雨龍文図鐔 無銘 西垣

Nishigaki

 肥後金工の創造性の背景には、千利休に学んだ細川三斎の茶の美意識があったといわれている。平田彦三の轆轤鑢や西垣勘四郎の腐らかしなどがそれに通じているとみられ、素朴な地肌を指先で感じられることこそ最大の魅力。この鐔も腐らかしによって地面に微細な凹凸と抑揚を生じさせたもので、時を重ねて黒味を帯びた素銅地の肌合いと色合いも備前焼を思わせる。素銅地に浮かび上がる雨龍は金の象嵌。耳に赤銅覆輪を廻らせている。

特別保存

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干し網図鍔(鐔) 銘 埋忠橘宗義

干し網図鍔(鐔) 銘 埋忠橘宗義

Muneyoshi

 漁具である網を円錐形に干した網干文(あぼしもん)は海辺の長閑な風景を伝えるとともに、末広がり、一網打尽、大漁祈願など吉祥文としても好まれた。深い錆色の下から覗く鍛えられた地鉄の微かな肌模様が、朝霧が流れていく様のようである。垂直に立てられた竹棹は赤銅、縄目を刻んだ象嵌金色絵の網はリズミカルに曲線を描いている。埋忠家嫡流の埋忠橘宗義には、「埋忠明壽孫数馬助橘宗義作」と銘した脇差があり、刀工でもある。

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85,000

大根図鍔(鐔) 銘 国永

大根図鍔(鐔) 銘 国永

Kuninaga

 大振りでほぼ真丸形の堂々とした鐔である。独特の杢目鍛えが地模様となり、鋤き残した土手耳にもはっきりと表れている。杢目鍛えの流れに呼応するように表裏相対するよう配された大根。浅い鋤出彫りで葉脈やひげ根を表し、柔らかく瑞々しい様子が伝わりくる。この鐔を更に印象深く面白いものにしているのが大小様々に散らされた円の透かしである。このポップな感覚はどこから来たのだろう。国永に関しては、詳らかでない部分も多いが、『刀装金工辞典』によると、「高木氏。幕府直参の武士でその慰作。杢目鍛えの鉄鐔を多く作る。」という記述がある。また、日本美術刀剣保存協会和歌山県支部発行の『紀州の刀装具』では、紀州藩の史書『南紀徳川史』に「天明(1781年~1788年)頃に高木十兵衛を名乗る藩工が紀州で活躍したことが記録として残っており、現に国永には紀州住国永や高木国永といった居住地や高木姓を刻した鐔も現存する。」とある。

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俵尽透鍔(鐔) 銘 春親花押

俵尽透鍔(鐔) 銘 春親花押

Haruchika

 俵はごろごろ、お倉にどっさりこ(*注)。時代は違えど、こんな歌が口をついて出そうな光景である。何はともあれ、千疋猿や百貝図など、数で攻められると人は圧倒されるものだ。肉置き豊かに膨らみを持たせ、間隔の詰まった線刻と高彫の縄目でぎっしり詰まった俵を耳に至っても正確に写実表現している。豊かさを象徴する縁起の良い鐔である。春親は江戸時代後期の土屋派の金工。佐渡や矢上と比べて一段と繊細な金工らしい彫法である。
(*注)野口雨情作詞の大正時代の童謡である。

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宇治川先陣図鐔 無銘 玉川派

宇治川先陣図鐔 無銘 玉川派

Tamagawa school

 極上質の朧銀地を品位の高い碁石形に仕立て、表面を微細な石目地仕上げとし、量感のある高彫で京の木曽義仲を攻撃する義経軍を写実的に彫り描いた鐔。佐々木高綱と梶原景季の姿を精巧緻密に彫り出し、拡大鏡でなければ分からないような細部も、巧みな鏨使いで表情まで再現している。金銀素銅の色絵に加え、橋板の落とされた宇治橋の寒々とした様子も効果的。水戸金工の特徴が良く示され、和漢の古典を題材とした玉川派の作と極められている。

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紗綾形葡萄文鍔(鐔) 無銘 埋忠

紗綾形葡萄文鍔(鐔) 無銘 埋忠

Umetada

 夜の水鏡に映った紅葉のような赤銅磨地平象嵌である。この鐔の形を何と呼ぼうか。柔らかく角を落とした長方形、それとも長丸形であろうか。中心に菱形を据え、その際を滑らかに削ぎ取った中には地模様のように紗綾形文が平象嵌されている。鮮やかな素銅の朱色、黒色化した銀の渋い輝き、華やかな金色。京の雅やかな趣を伝える埋忠ならではの作風と技術である。

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雲龍図鍔(鐔) 無銘 阿波正阿弥

雲龍図鍔(鐔) 無銘 阿波正阿弥

Awa-Shoami

 京正阿弥が得意とした金を多用した華麗な布目象嵌を継承した阿波正阿弥。雲を従え鐔に巻き付くように身を躍らせる龍は輝く黄金色。一つ一つくっきりと彫られた鱗は動けば音がしそうである。雲は金と青金。深い錆色をたたえた鉄地には蒔絵さながらに金、青金の真砂象嵌を散らしている。本作は鐔の形状も常とは趣が違う葵木瓜形の土手耳仕立て。拵装着時の美観を演出するため耳にも金布目象嵌を施した入念作である。

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蔦唐草図鐔 無銘 仙台清定

蔦唐草図鐔 無銘 仙台清定

Kiyosada

 無銘仙台清定の特徴と技術力が示された美しい構成の鐔。木瓜形に造り込んだ赤銅地を土手耳風に仕立て、地面には粗い石目地を施し、耳際には極めて細く繊細な平(ひら)象嵌(ぞうがん)と、くっきりと盛り上がった線象嵌の組み合わせにより蔦紋と唐草を華麗に配している。ごく一部に朧銀地による家紋を配しているのが興味深い。仙台金工の流れを汲む清定は、江戸の大森家に学んで帰国、独特の文様表現を得意として伊達家に仕えた。

特別保存

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