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黒朱塗梅樹図箔絵吉祥文螺鈿刀掛

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江戸時代 琉球
横幅 二尺ニ寸六厘
高さ 一尺八寸八分 奥行 八寸一分五厘
九本掛
伊藤満『刀掛』所載
Edo period, Ryukyu
Width: 2 shaku 2 sun 6 rin (61.4 cm)
Height: 1 shaku 8 sun 8 bu
Depth: 8 sun 1 bu 5 rin
9 hangings
Published in Ito Mitsuru's "Katana Hanging"

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円(税込)

刀掛

2249

​No.

琉球塗刀掛の歴史は、他の漆器類と同様に室町時代に大陸より伝来した技術が背景にあり、後に薩摩島津家との関わりが強まるに従って我が国の嗜好に叶った装飾が採られるようになった。江戸時代には、南蠻渡来の器物と同様にその異国情趣が好まれ、大名家や豪商の、床の間の飾りの要素としても採り入れられたのであった。

因みに、江戸時代後期の浮世絵師歌川廣重による、江戸の隠れた名所尽しとも言い得る著名な料亭の揃い絵『江戸高名会亭尽』の一、『山谷八百善』に、朱漆仕立になる本作と同趣の刀掛が描かれている。このような環境で刀掛が実際に使われていた事実を示す記録として極めて貴重である。

 琉球漆器は、朱漆を基調とした器物と、螺鈿が装飾の要とされた器物に大きく分けることができる。光彩を滲ませる螺鈿の特徴を活かすために黒漆を用い、平面描写だけでなく繊細緻密な線描、時には立体的な高彫表現を加えるなど、特に貝殻が持つ美観を多面的に活かす工夫が為されている。

鮮やかな色合いからなる朱漆を基調とした器物にも技術的な、あるいは表現としての特徴がある。金箔を用いた装飾の箔絵、彫り込んだ細い筋に金箔を塗り込んで線描写する沈金(ちんきん)も琉球漆器の見どころの一つである。

この刀掛は、中央に大きな日輪を透かして朝日に輝く梅樹をその周囲に金箔で描いた、新春を寿ぐ意味合いを備えた作。鮮やかな朱漆地が太陽を強く印象付けている。その周囲にある黒漆地の存在もまた朱と日輪をより一層際立て、永遠の輝きによって万物の命もまた失われることなく受け継がれることを暗示している。

 朱漆地に金箔で描かれているのは今が盛りの梅樹。左から大きく流れるような枝振りで鏡板いっぱいに花を咲かせている。枝には色の濃い朱漆を用い、金粉で全体の輪郭をとり、花弁は紅色を帯びた朱で、暖か味のある色合いの妙味を示している。遠くからの眺めでは日輪が目に付く。

近付くに従って朱漆の中の梅樹に気付くのだが、さらには黒漆地に施された虹色の多彩な文様に目が釘付けとなる。細やかな文様を駆使した装飾が示すこの趣向は琉球漆器の特色と言えよう。

 青、緑、紅、紫、白等々、光の当たる角度によってグラデーションのある光彩変化を起こす螺鈿は、それだけでも装飾素材として魅力だが、この刀掛では、多様な文様をこれでもかと全面に散らし配され、その構成美も極められているのである。

 琉球漆器のこの刀掛は、鏡板が大きいためであろう、下部の梁と上部の横板を、いずれも複式に設けている。下部梁板の装飾性も高め、梅樹と竹林を左右に分けて配し、さらに横木を組み合わせて唐花唐草文を帯状に連続させている。

その下に設けられた反り止めには、飾り帯を纏った二疋獅子を主題に、七宝、唐花、宝珠などの文様が描かれている。格狭間のような透を設けた上部の横板も同様に細やかな文様散らしで、七宝、瓢、丁子、巻物、ビンザサラ、卍などの宝尽し文が、台座となる足にも七宝、鈴、瓢、菊唐草、宝袋、ビンザサラなどの文様が配されて一際鮮やか。

刀受けが設けられている柱には様々な形状の梅花のみが描かれ、その花芯には繊細な毛彫が加えられて、文様ながら生命感が覗える。

 獅子や宝尽し、老梅に竹林など描かれている要素は江戸好みにほかならず、高位の武家の注文に応じて意匠されたものであろう。歌川廣重の『山谷八百善』に描かれているような朱漆一色の下地ではなく、黒漆螺鈿象嵌と、朱漆金箔仕立ての、琉球漆器二様式を組み合わせている点も、特別の意匠からなる作と考えられる。
黒朱塗梅樹図箔絵吉祥文螺鈿刀掛
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