激しく打ち付ける波を背景に、錨を印象的に表現した鐔。源平合戦では、ここが最期と観念した平知盛が錨を体に巻き付けて壇の浦に沈んだ場面を思い浮かべる図柄。大振りに造り込んだ山銅地を厚手の金板で包み込み、全面に波文を高肉に彫り出し、さらに量感豊かに錨を浮かび上がらせている。京の正阿弥派の流れを汲む阿波正阿弥派の鐔工は、その華やかな意匠を特徴とした。この鐔も、金と黒の対比を活かしている。