野猪図鐔 銘 明治三庚午歳 雪松[印忠光]

 水場を目指して野を駆ける猪。猛進する姿が凛々しく、ただ一点前方を見つめる目も鋭く、物事に動じない強さが窺いとれ、作者の狙いは野生の猪ではなく、武士本来の姿であった。雪松は幕末から明治を活躍期とする岡田雪峨の門人。東龍斎派の流れを汲むことから優れた構成の作品を遺している。この鐔も鉄地を鋤き下げて主題を肉高く彫り出し、要所に金銀の象嵌を施して生命感を鮮明にしている。裏面は瀧の流れ落ちる美しい渓谷の風景で、奥行き感が際立っている。

野猪図鐔 銘 明治三庚午歳 雪松[印忠光]