若松に鶴図小柄 銘 戸張富久(花押)

 正月飾りにもみられる根引きの若松に飛来した鶴。この図の背景には、長命を願う蓬莱思想がある。戸張富久は喜惣次、または喜三治と称し、江戸に栄えた町人文化を好んで酒井抱一などとも交流し、俳諧にも通じて感性を磨き作品に活かしていた。この小柄は、綺麗に揃った赤銅魚子地を下地として、後藤家にもあるような古典的意匠からなる若松と舞鶴を高彫にし、金銀の色絵を施して品の良い画面を創出している。翼の一部を素銅地として色合いの美観を高めている点も見どころ。

若松に鶴図小柄 銘 戸張富久(花押)