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笹舟に蜘蛛図鍔(鐔) 銘 城州西陣住正阿弥市郎兵衛政徳作 

 激流と言ってもよいほどの、波頭を立てて迸る川の流れを頼りない笹の葉を舟に小さな蜘蛛が運ばれてゆく。何かの寓意だろうか。自ら舟を操れるわけもなく、風任せ波任せで進むしかない。このスリリングな状況を取り囲む世界は金銀象嵌で飾られ、夢のように美しい。松や柳、笹と蜘蛛は厚みのある濃密な布目象嵌だ。岩や樹皮には蒔絵の切金のような金銀の象嵌が撒かれている。 
西陣という場所に育まれた感性によるものか、市郎兵衛政徳が描く世界は西陣織の意匠を彷彿させる。京正阿弥派の中で構図、意匠、技量全てにおいて最も優れた金工であろう。さて、蜘蛛の行く末やいかに。案外気に入った場所があったら岸辺にぴょんと跳び移るつもりなのかもしれない。

笹舟に蜘蛛図鍔(鐔) 銘 城州西陣住正阿弥市郎兵衛政徳作 
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