竜田川蒔絵刀掛

 ちはやぶる神世も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは(在原業平)
 業平は『古今和歌集』で、業平が清和天皇の女御であった高子を訪ねた際、高子が用いていた竜田川屏風を見る機会があり、これを題材に詠んだものであるとしている。即ち、業平の和歌以前にすでに竜田川が歌枕として知られていただけでなく、絵画の題材としても好まれていたと考えられる。この刀掛は、我が国の伝統とも言うべき自然観によって真正面から対象に迫った作。造り込みは大振りの仕立てからなるものの安定感があり、上部の持ち手もバランス良く、表裏同形の四本掛け。描法は、黒漆に金粉を叢梨子地に塗り施して文様の背景とし、流れ下る竜田川は銀粉と金粉蒔絵、色付いた楓は金粉と朱粉の蒔絵に繊細な付描。

竜田川蒔絵刀掛