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猛禽捕猿図二所 小柄・笄銘 岩本昆壽花押

 松の枝に止まり何かを凝視する笄の鷹。猿の顔を鋭い爪でガっと掴み、足を嘴で突く小柄の鷹。自然の摂理、弱肉強食を表す冷徹な場面に見えるが、果たしてそうであろうか。
 会津の鳥追観音(如法寺)に左甚五郎作と伝えられる「隠れ三猿図」という木彫がある。鷹に睨まれ身を隠す「災難より隠れさる」。鷹の視線から外れた「災難より逃れさる」。そして身を丸めて眠る「安楽に暮らしさる」。観音の大慈大悲に祈願してこの三体を見つけることができれば、硬い蕾が花開くように幸運が開き「福まさる」になるのだという。この「猛禽捕猿図」には、その裏に「隠れ三猿」が暗示されている。鷹は「仏」を、猿は「人間」を表していて、猛禽捕猿は仏が人を救っているという説もある。
 粒の揃った微細な赤銅魚子地を背景に、四分一地の高彫を据紋象嵌し、要所を素銅、赤銅、金で彩っている。岩本昆寛の高弟昆壽は師譲りの写実描写で極めて立体的に動植物を彫り描いた。昆寛より視点がシニカルに思えるのは気のせいだろうか。
 武家好みの「松鷹図」は永遠を表す常緑の松に支配者である武士を象徴する誇り高く勇猛な鷹を配したもの。では、鷹と猿はどうであろう。武士ならばやはり「弱肉強食」か。自らが狩られるものになるかもしれない。自戒を込めて常に身に着けていたのであろう。

猛禽捕猿図二所 小柄・笄銘 岩本昆壽花押
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