流水に帰雁図大小鐔 銘 後藤光美(花押)

 宗家十五代真乗光美は、先代光守の嫡子で安永九年の生まれ。享和四年正月に先代が没したため、同年(文化元年六月)に家督を相続している。桃山時代の五代徳乗などにもわずかに鐔の製作がみられるが、時代の要求に応じたものであろう江戸時代後期の工が鐔を手掛けている。中でも光美の製作した図柄は、獅子や這龍など霊獣だけでなく、町彫金工にもあるような秋草図、風景図、舞鶴図など多彩であり、後藤家の伝統を超えて視野を大きく広げようとした意図が窺える。帰雁図は、小栗宗継筆大徳寺養徳院の襖絵(さらに遡る作品があったことも想像される)を手本に多くの絵師が描き、装剣小道具では金家も同趣の作品を遺している。金家は創り出すことそのものが禅であると捉えたものであろう、安親もまた禅に通じてはいたが、次第に独創的絵画表現へと傾倒していった。

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