李杜騎驢図鐔 銘 山城国伏見住金家

 この鐔は、抑揚変化を付けて素材そのものにも表情を持たせた金家独特の鉄地を高彫にし、李白と杜甫が旅をしている、所謂李杜騎驢の場面。鉄色黒々として鋤彫と高彫が絶妙の調和を生み、金家の技術の本質の一つである共鉄象嵌もその接合部が全く分からないほどの自然な状態で、古甲冑師など古鐔の肌を見るような、微かな鍛え目が図柄の中の景色の一部を成している。金家の魅力の一つに人物の顔の表現がある。後の多くの金工に影響を与えたであろう、精巧で緻密な高彫は、わずか数ミリの空間ながら微細な皺や髭を再現し、目や口が動いているのではないかと思わせるほどの細やかな描写。もちろん二人の顔つきや表情は違えており、遠くを眺めるために翳した手も、胸元に堅く結んだ拳もまた強い動きを秘めている。のんびりとした旅であろう、驢馬の動きも躍動感があるものの両者の表情に沿って穏やか。身体と衣服の揺れる様子などもごく自然な描写となっている。

李杜騎驢図鐔 銘 山城国伏見住金家