想夫恋図鐔 銘 干英子野村包教製 江州彦根住

 野村包教は江州彦根の出身で、同国に隆盛した藻柄子宗典の一門。後に江戸に出て大成している。鉄地高彫表現からなる本作のような彦根彫の他に、地透を施さずに精巧で緻密な高彫象嵌のみによる古代中国の仙人や歴史人物を活写した鐔を遺している。特に人物描写を得意とし、複数の人物の表情を描き分け、見る者の視線を釘付けにする力を備えている。この鐔は、野村包教の感性と技術を代表する傑出作である。
 小督は宮中へ戻ることになったが、範子内親王を産んだことによって清盛に知られるところとなり、東山の清閑寺へと追放されてしまう。『平家物語』に記されているこの小督哀話は、能楽の『小督』に採られて遍く知られている。また『黒田節』の第二節にも、「峰の嵐か松風か 訪ねる人の琴の音か 駒を引き止め立ち寄れば 爪音たかき想夫恋」と、この情景が謡われている。
重要刀装具

想夫恋図鐔 銘 干英子野村包教製 江州彦根住