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富士図笄 銘 後藤光文(花押)

 上質の赤銅魚々子地に浮かび上がるように高彫されたのは霊峰富士。数種の鏨で山肌に抑揚を付け銀色絵に金色絵を重ねて雪を頂く美しい姿を表している。纏わりつくように湧き起こった雲は赤銅磨地の高彫。恰も龍が潜んでいるかのような形状である。色彩と質感の対比が際立ち主題を明確に印象付けている。笄本体の金哺も鮮やかで銘字は力強く流麗。後藤光文は京後藤勘兵衛家十代当主。没年は明治二十年、享年六十七才。後藤宗家四代光乗の次男長乗を初代とする勘兵衛家は代々加賀前田家より三十人扶持を給され宗家と隔年で加賀に下って技術指導をした名門。江戸から明治へ、時代の大変革期に遭遇した故であろう、後藤光文自身銘の作は少ない。

富士図笄 銘 後藤光文(花押)
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