井堰勝虫図鐔 銘 乙柳軒味墨[花押]

 乙柳軒味墨は江戸に栄えた奈良派の名流浜野宗家が用いた号。この鐔はその四代目政信の作。素銅地を石目地に仕上げ、風情のある景色を奈良派の特徴的な高彫に表現。題材は夏の風物で、水門から流れ出る清らかな川の流れに産卵の場を求めて集まり来た蜻蛉の様子。鄙びた景色、長閑な農村といった風情だが、江戸時代には街中でも見られた一場面ではなかろうか。前にのみ進むことから勝虫と呼ばれる蜻蛉だが、ここでは自然の小さな営みに休まる心を題意としたものであろう。

井堰勝虫図鐔 銘 乙柳軒味墨[花押]