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二つ銀杏紋散図鍔(鐔) 無銘 太刀師
手に持つと驚くほどずっしりと重い。横に張った安定感のある厚手の山銅地は、切羽台に無数の荒々しい鏨の跡が見てとれる。金色絵の魚子地から浮かび上がるのは雪輪のようにも花のようにも見えるが、銀杏の葉を二枚組み合わせたもの。神社の御神木や街路樹として親しまれている銀杏だが、文献に登場するのは十五世紀半ばに編纂された国語辞典『下学集』が今のところ最古である。紋章として成立したのも同時代くらいであろうか。(因みに徳川家康の父の廟所に剣銀杏紋が付けられていることから、銀杏紋は徳川家に縁があるという説がある。)山銅地高彫の銀杏紋は、上下左右に配したもののみを銀色絵としている。猪の目透の小縁と耳にも銀色絵を施し、金、銀、山銅の色合いが不思議な明るさで見事に調和している。古美濃の鐔などによくみられる小柄笄櫃の形状、太刀鐔としての表側の方が僅かにこんもりと盛り上がっている様や幅広の木瓜形も時代の上がる鐔の特徴を表している。

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