中筒火縄銃 無銘

銃身に葵紋と鯉の滝登り図を象嵌した華やかな作ながら、寸法を控えめに操作性を高め、口径を大きくして威力を追求した中筒。火縄銃の性能の一つに破壊力がある。この銃から射出される弾丸の重量は六匁(二二・五グラム)、おおよそ五円玉六枚強に相当する。これを火薬の爆発力で発射させるためには、粘り強い素材からなる頑丈な銃身が不可欠。鉄炮鍛冶は鋼の性質を見極め、破裂の起こらない良質の鋼を合わせ鍛えたのであった。
本作の銃身は表一角と呼ばれる丸筒の上面を平にした珍しい形状で、先端の柑子は八角とし、表面に丸味を持たせる一方、最先端部には角張った八角縁を廻らしている。銃身表面には笹竹の生い茂る瀑布を遡上する鯉を銀の布目象嵌で大胆に、激流や笹竹は繊細な銀の平象嵌で表現している。加えて、滝より飛び散る水飛沫を意図したものであろう火鋏には通常ではまず見られない銀の点象嵌がふんだんに施されている。

中筒火縄銃 無銘