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2023年1月30日 6:44:05

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第八回 肌目に絡む沸の粒子

(関連リンク)

名を変える沸

沸は刃中だけでなく地鉄の中にもあることは説明しました。
刃縁や刃中にきらめく粒状の輝きを「沸:にえ」と呼ぶことは既にお話しました。

沸が「地鉄:じがね」部分に現れた場合、この沸を「地沸:じにえ」と呼んでいます。

天使顔
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地沸の濃淡


この刀においても、地沸は厚く、時に叢になって地中に点在しています。
地沸が厚くというのは印象です。地の底から湧き出すように、澄んだ地の所々に叢付き、時に白く、時に黒く沈んで観察されます。沸とはこのように白い部分と澄んで黒く見える部分の混じり合ったものです。




天使顔
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刀身彫刻と刃文の高低

刃文構成は、下部が浅い湾れに小さな尖りごころの小互の目交じり、それに比して上部の焼幅が深くなっています。
焼入れされて白く変質した刃の部分は硬度が高いために彫刻ができないことから、彫刻を施す場合にはそ
の部分の焼幅を浅くするのが基本です。

天使顔
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刃文の複雑さと相州伝

焼刃は沸が主体で、もちろん匂も複合していますが、以前に紹介した虎徹や清麿ほどはっきりとはしておらず、刃中に透明感を生み出すように淡く広がっています。刃縁(地と刃の境界)には鍛え肌に伴って引き裂いた和紙のほつれた部分のように沸が叢付き、刃中に沸が広がってはいるものの形状のはっきりしない互の目となり、これを切るように屈曲した金筋や淡い金線が走り、筋状に沸が連なり、これらの働きによって刃中に沸が島のように凝るなど、沸を主体とした濃密な働きが生まれています。


帽子(鋒部分の焼刃)も、乱れ込んで沸付き、先が掃き掛けて深く返っています。
このように刃文の形状が判明できないような複雑な乱刃は、南北朝時代の相州刀に見られる特徴です。

天使顔
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相州伝の沸、大和伝の沸

沸の強い刃文も相州物の特徴の一つですが、同じく、沸の強く表れる作品に大和伝があります。
相州伝と大和伝は共に沸出来の作風を専らとし、双方共に在銘作が少ないために、

大磨上無銘(おおすりあげむめい)の刀を極める際に、大和伝か相州伝か判断が分かれる場合があります。
此の際、決め手の一つとなるのが沸の表れかたです(鎬筋の高低や柾目肌の有無など他の決め手と合わせて判断される)。

大和伝は刀身先端に行くほど沸が強く表れる場合が多く、
相州伝は元先で沸の強弱がほぼ均一になる傾向があります。


天使顔
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沸の妙味

国広は相州伝の名手として名高く、沸の働きは新刀鍛冶中屈指の冴えを見せ、その作風は正宗に比肩すると賞揚される名工です。
国広の相州伝写しは沸の輝きが強く、刀身全体に亘って均一に表れるもので、この点からも
国広の作刀理念が相州伝(鎌倉時代末期から南北朝時代初期の相模国に興った刀の造り方)にあると考えて良いでしょう。
古伝の魅力に洗練味を加味した国広の作風は、後の刀工にも受け継がれています。

天使顔
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日本刀専門店 銀座長州屋

​Ginza Choshuya co&ltd

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