2024年10月19日 3:37:18
Imazu

第十七回 小乱刃に互の目丁子と沸筋
【沸出来もある? 備前刀の刃文】
備前刀の刃文の特徴の一つに、匂が主たる要素となっているという点があります。もちろん総ての備前刀が当てはまるわけではありませんが、傾向として匂を主とする刃文となります。ところがこの一文字真忠の薙刀のように時代の上がる作には、沸が強く現れたものが 多く、これも備前刀の作風の流れを考える上でのポイントとなっているようです。
粒子状の沸
【古備前と特徴】
例えば、備前刀工の中でも一文字派より遡る古備前と呼ばれる流派は焼刃に沸が付くのが特徴であり、仮に一文字諸工と似た刃文構成であっても沸の付き方が見極めどころと考えられています。そして、一文字派の中でもこの薙刀のように沸が強く現われた例は、時代の上がるものと考えられています。刃文の華麗さに留まらず地鉄と感応し合った働きそのものが活発で、この点が変幻妙味ある地鉄に対応しているところと言えましょう。
古備前の特徴
【不定形に乱れる刃文】
この薙刀の刃文構成は、定まった形のない互の目乱が基本で、焼出しは焼幅浅く湾れ調に小乱が交じり、刃縁には沸が付いてほつれ掛かり、刃中に沸が広がり砂流 しとなっています。刀身中程から焼が深まり、互の目の連続ではないにもかかわらず処々地に丸みを帯びて深く突き入るなど丁子が顕著となるところに一文字派の特徴が窺いとれます。
不定形の刃文
【炎を思わせる激しい出来】
刃縁の杢目肌に沿って現れた地景は、刃中では屈曲した稲妻のような金筋に変り、これに沸筋とほつれが絡み合って躍るように流れていま す。この傾向は物打から上において顕著で、時に綾杉文様のように褶曲し、刃中の地肌は沸を伴って鋒に向かい、先端は火炎のように沸が掃き掛け、ほぼ焼き詰め状に棟に至っています。
沸の激しい刃文と匂い主調の華やかな刃文 同じ刃文でも魅力が大きく異なることがお判りいただけますでしょうか。
重花丁子
【匂と沸の競演!】
総体の刃文は沸主調ながら、刃中に匂が充満しています。濃密に刃中に立ち込めた匂は、製作の時代にかかわらず名刀の証しです。以前紹介したことのある江戸時代前期の長曽祢虎徹、あるいは江戸時代後期の源清麿にも同様に刃中に匂が満ちているという共通点があります。
【蛙子とは?】
蛙子丁子と重花丁子
日本刀専門店 銀座長州屋